テレビインタビューを終えると、テレビ、新聞などを含めた記者の囲み取材へと流れる。これが甲子園の試合後に行われる矢野監督取材のパターンだ。今季はこの監督取材も参加する記者の数が制限される。もちろん感染拡大防止が目的だ。逆転勝利を収めた8月2日DeNA戦の後だった。矢野監督はテレビのインタビューを終えると、質問した若手のインタビュアーに優しく語り掛けた。

「あっこ聞いてくれたら良かったのに。台本通りにいかんでいいから。『なんであそこは島田なんですか?』って。興味持ってくれたことを聞いてくれたら、たぶんテレビの向こうのみなさんも聞きたいことやから」

この日の試合、6回に代走島田が二盗に成功して4番大山の逆転2点打を演出。期待の韋駄天が3年目にして成功したプロ初盗塁。指揮官も「MVPは島田の盗塁」と評したビッグプレーだった。

このご時世、なかなか監督や選手、チーム関係者を直接取材することが出来ない。取材人数も取材機会も制限される。選手の思いやプレーの裏側をどのように取材して伝えるか。難しい。ただ、嘆いてばかりもいられない。矢野監督の言う「みなさんも聞きたいこと」をいかに集められるか。指揮官の言葉を聞いて背筋が伸びた。【阪神担当=桝井聡】