「見返してやりたいん弾」で“1発回答”した。楽天辰己涼介外野手(23)が11日、西武6回戦(メットライフドーム)に「9番右翼」で5試合ぶりのスタメン出場。1点リードの2回に4号2ランを放ち、三木監督の起用に応えた。18年新人王の田中、渡辺佳らを含め、外野定位置争いは激しい。10試合ぶりの1発でアピールした。チームは貯金を6に伸ばし、ソフトバンクと並び、首位をキープした。

   ◇   ◇   ◇

白球に飢えた辰己が、頭からガツンとかみついた。1点リードの2回2死一塁。西武高橋光の初球、内角140キロカットボール。体に食い込んでこようが、お構いなし。脇をがっちり締めて振り払った。打球は高々と舞い上がり、右翼スタンド中段まで到達。「結果を出して首脳陣を見返したいという思いでプレーしました。カットボールにうまく反応できました」。5試合ぶりのスタメン出場に一振りで応えた。

指揮官からの熱は、十二分に届いている。だからこそ、バットに熱がこもる。

辰己 期待していただいているんですけど、よく裏切るので(監督が)「あぁ…」という感じのシーンをよく見ます。申し訳ないなと思っています。だからこそ裏切らないように頑張りたいです。

開幕から17試合連続でスタメン出場も三木監督は「僕があいつに求めることは高い」と緩めない。守備時に送球判断を間違えれば「あれはミス」と言い切る。ファームで好調の田中を4日に昇格させた。「開幕からスタメンが多かったが練習でやっていることがなかなかうまくできない、状況判断ができなくて苦しんでいる。こういう状況が人間、選手を成長させる時期。評価は人から受ける。自分自身を知ることが辰己には大事。(田中)和基がきて意識はあると思う」。明確な狙いを持って成長を促す。

この日の1発でも、評価がうなぎ上りとはならない。「また1つ成長につながると思う。でもあいつに望んでいることはちょっとやそっとのじゃない。今日のホームランでほっとしないで強い気持ちでやってほしい」。期待の裏返しが言葉にこもる。

3点リードの4回2死一塁。辰己は再び高橋光から直球を左前へはじき返した。2ボールから強引にならず、つないだ。「自分の能力を殺さないようにプレーしたい」。満腹にはほど遠い。1球1打にガツガツ食らいつく。【桑原幹久】

○…辰己がホームランパフォーマンスに込めた思いを口にした。本塁打後はベンチ横のテレビカメラへユニホーム左袖にある「がんばろう東北」のワッペンを指でさす。「僕は関西人(兵庫出身)ですが縁あって東北に来ましたし、東北の方々にもプレーで元気づけられたらなと思ってずっとやっています」と1年目の昨季から続ける。だが、この日は恒例ポーズをやらずにベンチへ。「忘れてしまいました…すみません」と申し訳なさそうに話した。