ソフトバンクの「クレバー投手」が戻ってきた。大竹耕太郎投手(25)が今季初登板初先発で6回途中1失点。昨年6月20日ヤクルト戦以来、420日ぶりの白星を手にした。初回に先頭打者弾を浴びながら、多彩な変化球を駆使してタイミングを微妙に狂わせた。昨年5勝した先発ローテーション左腕が、左肘痛から復活。楽天との首位争いのなか、チームに4連勝をもたらした。

   ◇   ◇   ◇

ペイペイドームのファンの拍手が心地よかった。ソフトバンク大竹が、お立ち台でのインタビューを終え、両手を上げながら歓声に応えた。「2軍で練習してきたことを自信に変えて投げることができてよかった」。先発6回途中5安打1失点。昨年6月20日、交流戦でのヤクルト戦(神宮)以来、実に420日ぶりの白星。すべてが報われた。

熊本の進学校・済々黌出身。冷静な分析と打者との駆け引きで凡打の山も築いた。1回、オリックス山足に2球目を左翼席へ運ばれても下を向かなかった。「次の打者からはうまく頭を切り替えて投げることができました」。100キロ台の遅いカーブに、自慢のチェンジアップ、ツーシームもさえた。

クレバーさに「熱さ」も加わった。「うちのチームでいえば、森さんのように気持ちで投げる投手のようなファイティングスピリッツを内に秘めて投げたい」。今夏、地元熊本が人吉を中心に豪雨被害にあった。「地震もあったし、豪雨もあった地元熊本にも元気を送りたい」。その思いも久しぶりのマウンドに持ち込んだ。

初回は一礼してマウンドに上がった。昨年7月25日以来、久しぶりの真っさらなペイペイドームのマウンド。さまざまな思いが頭をよぎった。今年宮崎での春季キャンプの2月9日。シート打撃登板直前になって左肘に張りを訴え、肉離れで離脱。折れそうな心を入れ替えて前だけ向いてきた。ウエスタン・リーグで4勝無敗、防御率1・98の安定感を見せつけて戻ってきた。筋力アップより体幹を軸にしたバランスを重視したトレーニングも実を結んだ。

1軍昇格ですぐ結果を出した大竹について、工藤監督は「先頭に打たれたことで目覚めたこともあるかもしれない。よく1点で抑えてくれた」と目を細めた。メンタル面もアップした左腕で4連勝。首位争いには欠かせない男の粘投はこれからが本番だ。【浦田由紀夫】

▽ソフトバンク明石(5回に適時二塁打) いいところに落ちてくれました。2アウトから作ったチャンスだったので、ものにできて良かったです。