選手のフォーム分析をする企画「解体新書」の今回は巨人のエース菅野智之投手(30)をチェックした。通算284勝で阪急の黄金期を築き、中日監督も務めた山田久志氏(72=日刊スポーツ評論家)は、開幕7連勝で好調をキープする右腕の「球速」より「見づらさ」に着目。13年の楽天田中将大(ヤンキース)以来、令和初の20勝投手誕生に期待を込めた。【取材・構成=寺尾博和編集委員】
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エースと呼ばれる男には勝つことが求められる。しかも常勝を宿命づけられた巨人のエースが背負うプレッシャーは厳しく、重いものだろう。
菅野が改造した新フォームは、(1)から(3)にかけて腕から始動し、それについて左足を上げていくというのが特徴と言われている。普通は(2)(3)を省くが、いったん「ひねり」を入れる。
要するに、その動作を入れることで、すくっと立った(5)から、左足の上げ下ろし、上下のバランス、重心移動までが、非常にスムーズで感じが良かったのだろう。
昨季の好不調の波は腰痛が影響したと聞いた。ただわたしがむしろ気になっていたのは、肘が上がらず横振りになっていた点。右腕が(12)からタテ振りになってボールが生き返った。
全体的には子供の「教科書」にしたくなるフォームと言える。わたしはキャッチボールを教える際「右手を太もも、最低でもベルトまで下ろしましょう」と指導する。右手が膝まで下がった(6)(7)から(8)(9)の流れは理想的だ。左サイドの壁もちゃんとできてる。
菅野と対戦した打者はボールを見ていると追い込まれ、どの球もストライクに見えるという。(7)から(11)(12)まではGIANTSの胸マークが見えない。しっかりとボールが隠れている。「球速」より「見づらさ」に、タイミングのとりにくさがある。
投手というのは、ちゃんとした「形」ができていないと長いイニングを投げ切ることができない。(11)(12)(13)にかけた張りもいい。(14)(15)は踏み出した膝にまだ余裕がある。人知れず投げ込みながら、このフォームを体に染み込ませたのだろう。
ちょっと気になるのは球種が多すぎることだ。興味を持つのはいいだろう。でも器用貧乏になってしまうと、ピンチになった場面で勝負を決める「この球」を見失いがちだ。
例えば田中のマー君の主体は直球、スライダー、スプリットの3つ。それは楽天時代と変わらない。またダルビッシュは球種が多いタイプで、確かによく曲がって、よく落ちる。でもわたしに言わせれば「もっと簡単に終わらせることができるのに…」と思ってしまうのだ。
持ち球が多い投手は球数も増える。菅野には今の持ち球を磨いてほしい。あとはもっとインサイドを使うこと。あまり得意でないのか、ふところにいかなくても抑えられるからか。今の投球だと、ワンシーム、ツーシームで近めを厳しく突けば、さらに投球が楽になる。
エースと称されるからには17、18勝しないと。それと13年のマー君以来、令和初の20勝にも挑戦してほしいものだ。打線との兼ね合いを考えると、今のプロ野球界で「もっとも20勝に近い男」といえるだろう。



