虎のゴリラが値千金のアーチを放った。2点を追う6回に、3番陽川尚将内野手(29)が逆転の今季1号3ラン。この1発がチームを勢いづけ、11安打11得点の猛攻につながった。中日を打力で圧倒し、2カード連続の勝ち越し。3位浮上で、勝率5割復帰に王手を掛けた。

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虎のゴリラが一振りで流れを引き戻した。6回に勝ち越された直後だ。近本、木浪が連打でつないで、1死一、二塁。3番陽川が中日福谷のフォークを完璧にとらえた。美しい放物線を描き、打球は左中間席に着弾。「前の2人がいい形でつないでくれたので、その流れに乗って打つことができた。長打力が自分の持ち味。結果としてよかったと思います」。今季1号は値千金の逆転3ラン。2戦連続の3番起用で結果を残した。

「ゴリラ」の愛称を持つ29歳は、ダイヤモンドを1周すると、恒例の「ゴリラポーズ」を控えめに披露。開幕前から「無観客でもそういったパフォーマンスは続けていきたい」と公言していたが、この日球場に駆け付けた4957人の観客の前で力強く胸をたたいた。矢野監督も「陽川のね、ゴリラパンチがすごくいい場面で出て、本当に最高なホームランでした」と大絶賛だった。

プロ7年目を迎える今季は、虎視眈々(たんたん)とスタメンの座を狙っていた。「去年はどうしても結果が出ない中でずっと結果がほしくて…」と悩んだ末、まずは視界を変えた。今季からコンタクトレンズを目に装着。「ボールがよく引きつけられるようになった」と効果を実感した。ボールを確実に捉えられるようになり、打席から見える世界も変わった。

「気持ちだけが先走ってしまって体がついてきていなかった」。精神を安定させるため、6月の開幕前からモチベーション維持のため、読書にふけり、1時間の入浴でリラックスに努めた。「今年は(コロナもあって)考える時間があった。そこが今プラスになってできているのかなと思います」。心身を整え、巡ってきたチャンスをつかんだ。 3番の1発が相手投手陣にダメージを与え、終盤の猛攻を呼んだ。チームは今季5度目の2桁得点で2連勝。2カード連続の勝ち越しで3位に浮上し、借金1で勝率5割も目前に迫った。お立ち台では「久々のGP(ゴリラパンチ)なので良かったです」とご機嫌だった。新3番がガムシャラにバットを振り、首位巨人を追う。【只松憲】