無事之(これ)名馬か。プロ7年目の陽川尚将内野手は地道にアピールを続け、少ないチャンスを生かした。金光大阪の恩師・横井一裕監督(45)は今年の初めに、こうつぶやいていた。「もらってから7年がたったけど、陽川みたいに丈夫なんです(笑い)」。1台の車が母校の球児を縁の下で支えている。その名は「陽川尚将号」だ。

東農大から13年ドラフト3位で阪神の指名を受けると、陽川はすぐに恩師に電話した。「何かできることはありませんか?」。プロ入りの喜びもそこそこに恩返しの相談だった。「プロに入って、プレゼントしてくれよ」と高校時代の会話を思いだし、母校の野球部に車を贈った。「荷物を運ぶときに便利なので本当にありがたい」と横井監督はうれしそうに話していた。

陽川は16年から2年連続でウエスタン・リーグの本塁打、打点の2冠を獲得。恩師は「2軍でホームランを打つたびにメールを入れていましたね。好調なときこそ、何もしませんよ」と陰で励ましてきた。プロの厳しい世界を実直な性格と頑丈な体で生き残ってきた。その能力が花開く時が来た。