阪神が球児魂で一丸、今季初のサヨナラ勝ちで414日ぶりの2位浮上だ。1-1の9回。4番ジェリー・サンズ外野手(32)が左中間へ13号決勝ソロを運んだ。この日、藤川球児投手(40)が現役引退会見を行った後、大逆転Vへチームを鼓舞。ナインは心をひとつにし、過酷な13連戦初戦をものにする力に変えた。3連勝で今季最多タイの貯金2。巨人も勝って6・5差はそのままだが、週末の直接対決4連戦へ食らいつく。

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背番号22の思いが、サンズの劇弾を後押しした。同点の9回先頭。イノーアの外角低めスライダーを振り抜いた。打った瞬間の当たり。サンズもベンチも、スタンドの虎党も勝利を確信し、打球は左中間席に吸い込まれていった。今季初、セ・リーグでは最も遅いサヨナラ勝利。歓喜の本塁では、矢野監督を先頭に選手たちが手をブラブラ。サンズの「ハッピーハンズ」パフォーマンスで、ヒーローを出迎えた。

試合前のクラブハウス。8月31日に球団から今季限りでの引退が発表され、この日午後に引退会見を行った藤川がチームメートを集めた。冒頭の引退あいさつもほどほどに、ゲキを入れた。矢野監督が詳細を明かした。

「何とかこの位置(順位)にいるし、もちろん上にいけると。外から見ていてもそう思うとね。チームを鼓舞するというか、自分もやれることは精いっぱいやっていくという話をしてくれた。ちょうど後半のスタートになったんで、みんなにはしっかり届いた話があった。それは良かった。助かっています」

前半戦を貯金1でターンし、勝負の後半戦は異例の大型13連戦からスタート。その初戦前、誰よりもチームの勝利を思う藤川の言葉が、チームの結束をより強固なものにした。

4回に先制打を放ち、試合も決めたサンズは心優しき男藤川を思った。「今までアメリカとかに行っていろんな経験をされている。英語で話しかけてくれたり、いろいろしてくれていた」。新加入の外国人にも気軽に声を掛け、アメリカや日本、韓国と各国の野球の違いなどの話もしたという。「(試合前には)激励に来てくれて。みんなの気合が入るように、たくさん言葉をかけてくれた」。その思いに最高の形で応えた。

連勝締めした前半戦の勢いそのまま、3連勝。敗れた2位DeNAを抜き、昨年7月15日以来414日ぶりの2位に浮上した。上には、藤川も強いライバル心を抱き続ける宿敵巨人しかいない。そのハートは、ナインにもしっかり伝わり、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。サンズが思いを代弁した。「これからもたくさん勝って、ジャイアンツにしっかり追いつけるように」。球児の花道を15年ぶりのVで飾る。一丸の虎が、巨人を猛追する。【奥田隼人】