なじみある東京ドームに帰る。セガサミー就任1年目で本戦出場を決めた西田真二監督(60)は「金石が敬遠したボールをクロマティが打って、僕のところに飛んできた。懐かしい」と含み笑いをしながら言った。

もう30年前だ。90年6月2日の巨人戦(東京ドーム)。広島の外野手だった。3番右翼で先発。1-1で9回裏を迎え、2死二塁で巨人の3番クロマティ。ここで広島ベンチは敬遠を選択。ところが-。高めのボール球を打たれてしまった。西田は急いでバックしたが、突然のことに転倒。ボールが転々とする間に二塁走者の桑田にサヨナラのホームを踏まれた。ちなみに、次打者の4番原は「いい音がしたんでびっくりした」と話していた。

そんな苦い思い出もある東京ドームだが、今度は指揮官として乗り込む。「第3代表だけど、東京代表としてドームで暴れたい。選手が!」と高らかに宣言した。

投手戦を制した。先発は草海光貴投手(22=上田西)は初回、いきなり先頭に中前打を打たれたが、「打者1人1人」と慌てない。次打者のバントで送らせず、二塁封殺。3番、4番を連続三振に仕留めた。5回裏終了後、雨で28分間の中断があったが「休憩が入って良かった」。チームメートとたわいもない会話でリラックス。再開直後の6回、先頭に二塁打を許し、1死三塁を招いたが、ここでも「打者1人1人」と2者連続三振で切り抜けた。

7回4安打無失点の右腕に、西田監督は「しのいでくれた。6回までと思っていたけど、7回まで投げてくれた」と目を細めた。2年ぶり11回目の本戦出場。大はしゃぎの選手たちを見ながら「これで会社も喜んでくれるのでは。それが企業チームのいいところ。(本戦に)行くと行かないとでは大違いですから」と強調した。練習中から明るく選手に話し掛け、コミュニケーションを重視。対話からチームをまとめ上げ、ドームに乗り込む権利を得た。【古川真弥】