「伝統の一戦」で完全燃焼する。阪神は11月10日の巨人戦(甲子園)で、今季限りで現役引退する藤川球児投手(40)の引退セレモニーを開催することを13日、発表した。タテジマ最後のマウンドの相手は、並々ならぬ思いで戦ってきた宿敵巨人。希代の守護神がG倒で花道を飾る。右上肢のコンディション不良で2軍調整中も、今週中に1軍に合流する見込み。現役22年間のすべてを注ぎ込む。

   ◇   ◇   ◇

打倒巨人に執念を燃やしてきた男が、伝統の一戦で完全燃焼を果たす。この日追加日程が発表され、11月10日に巨人戦(甲子園)が組み込まれた。巨人との今季最終戦が、藤川の引退試合になった。

「いい戦いをしてきた、自分としては。はっきり分からないけど、対巨人戦というのはもちろんそうなんですけど、数字的にも一番いいんじゃないかなと。チームとして戦ってきた数字が僕の数字。タイガースの自分が現役でいた数字として残った気持ちの表れだと思う」

タテジマの宿命を背負ってきた。宿敵を撃破することは阪神に入団した選手の責務。かねて口にしてきた「伝統の一戦」への熱い思いは、数字にも表れている。藤川の対巨人の通算防御率は、セ・リーグ5球団でトップの2・10。セーブ数も対中日に次ぐ46セーブを挙げた。虎の守護神の花道を飾るうえで、これ以上ない舞台が整った。

ここまで2軍調整を続けてきたが、今週中にも1軍合流する可能性が高まった。矢野監督はこの日の試合後に「投げられるように球児自身もやってくれているんで、どこかで上げようかなと思う」と話した。1日にはウエスタン・リーグ、オリックス戦(鳴尾浜)で52日ぶりに実戦復帰し、1回1安打無失点。「1日でも早く復帰できればと思って、調整しています。打者1人かもしれないけど、そういう姿を見せられたらなと」。現役22年間を応援してくれた声が、復活への源。出来るだけ多くのファンに勇姿を届ける。

日米250セーブまであと5に迫りながら現役引退を決意。要因となった右腕の状態は、現在も完璧とはいえない。「1回登板すれば、その分回復しきらない。多分下がっていくだけだと思うし。でも最後、何とかね。どちらかと言えば、勝負というよりは、ファンの方に登板しているところを。どんな状況におかれても前向きにチャレンジして。そこで、もし何か伝わるものがあれば」。すべての力を振り絞って、代名詞の「火の玉ストレート」を投げる決意だ。

引退セレモニーは試合終了後に行われ、来場者には引退記念グッズがプレゼントされる予定。「その日、感謝を伝えられたら。プレーでというのもありますし、何かを感じてもらえるような場になれば。場にしなければいけないかなと思います」。感謝とさまざまな思いを胸に、守り続けたマウンドに立つ。【磯綾乃】

◆藤川と巨人戦 通算143試合に登板。防御率2・10は、対セ・リーグ球団では最良だ。救援登板した試合での奪三振数209も、カード別1位。46セーブは、中日戦の47セーブに続き2位。優勝した05年には、13試合に投げ15イニング無失点という、驚異的な成績で宿敵を封じ込めた。また対戦打席数最多は、巨人の阿部慎之助。幾多の名勝負を繰り広げてきた。