#コロナに負けるな アジャが泣いた。ロッテ井上晴哉内野手(31)が楽天19回戦(ZOZOマリン)の9回、サヨナラ二塁打を放った。コロナ禍で主力が10人以上離脱するチームを連敗から救った。5回まで0-3で敗色ムードも、6回以降1点ずつ返して、今季5度目のサヨナラ劇。逆転勝利はリーグ最多の27度目だ。仲間の分まで振り抜く男の一打で、首位ソフトバンクからは2ゲーム差のまま離れず、3位楽天とのゲーム差は6に広げた。

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泣きたい夜もある。叫んだって、私情が入ったっていい。「期待に応えられなくて」と切り出し、声が裏返った。「どうしても応えたくて! どうしても打ちたかったんで、何とかしました」。お立ち台での告白に、ZOZOマリンのあちこちで涙が落ちた。

男の勝負は9回1死一塁。右中間に運び、二塁を過ぎるとひざをつき、歓喜を待った。二塁打で、いつもすることがある。「スタンドを見るんですよ、あぁ、こんなにお客さん入ってるんだな~って」。フィールドの中心で1人過ごす。この日は自分も仲間もスタンドも真っ赤な「CHIBAユニホーム」。赤い世界はどんどん潤み、両手を震わせながら天へと組んだ。

いつも朗らかだ。見逃し三振をしても、自分を納得させるような表情で戻る。悔しくないはずがない。特に直近5試合は20打席で11三振。「映像で振り返っても、明らかに自分の状態が良くないのは分かっているし、何とかしたい。しないといけない」と自らを精神的に追い詰めそうになった。自宅では愛息に癒やされるが、結局は野球をして遊んでいる。

「アジャ」と愛される7年目。31歳になった。頼れる先輩たちが今、コロナと闘っている。主力として、気負わないはずがない。「(気負いは)今までより一番強いですし、本当に何とかしたい気持ちが。空回りして、どうにかしたい、どうにもできない」。まだ万全ではない。もがいた末に運んだのは、ずっと練習してきた右中間だった。

苦手の楽天に押され、中盤まではため息がスタジアムを覆った。「でも、いつか絶対に逆転できるんだってみんな信じてます」。逆転優勝への合言葉は「JUST GO FOR IT(さあ、突き破れ)」。自身3度目のサヨナラ打がもたらした、この1勝は極めて大きい。赤い歓喜に包まれるアジャに益田が、マーティンが、安田が次々と駆け寄る。目を赤くし、はなをすすりながら「ぼく、なんで泣いてるんですか?」と何度も問いかけた。みんなが答えを知っていた。【金子真仁】