“打ち出の小づち”が24億円左腕を打ち崩した。楽天浅村栄斗内野手(29)がリーグトップの31号決勝弾を放ち、チームの危機を救った。

日本復帰初先発となるロッテのチェン・ウェインから同点の6回に左翼席へたたき込んだ。1発を放った28試合は24勝4敗、勝率8割5分7厘。ロッテは今季、ZOZOマリンで先制すれば18戦全勝だったが、このジンクスも打ち破った。負ければ自力CS進出の可能性が消滅する一戦で、主砲が仕事を果たした。

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白星への強烈音が鳴った。同点の6回。先頭浅村がチェン・ウェインを捉えた。3ボール1ストライク。バッティングカウントに、おあつらえ向きな真ん中140キロ直球を逃さない。スイングから4秒後には左翼席中段へライナー性の打球が届いた。「完璧です」。余韻をかみしめながら、一塁へ歩く。久々に日本のマウンドで躍動する左腕へ、苦虫をかませた。

快音が鳴れば鳴るほど、白星がついてくる。浅村が1発を放った28試合は24勝4敗(勝率8割5分7厘)。不発の71試合は24勝43敗4分け(勝率3割2分4厘)と一目瞭然。打てば勝つ。「楽天に来る前からずっとその気持ちを持ってやっている。いいところで回ってくるのがクリーンアップ。足を引っ張っているとチームの勢いも無くなるし作れない」。自らのバットにかかる期待、重圧に正面から立ち向かい続け、今の立場を築いた。

ほぼ未感覚の球にも、狙いはぶれない。チェンとの対戦は西武時代の11年5月20日のみ。3打数無安打に倒れた。「情報が少なかったので、自分が打てるボールを打とうと思って試合に臨んだ。1発で仕留めることができました」。仕事を果たした。

前夜はサヨナラ負け。負ければ自力CS進出の可能性が消滅する一戦で、本塁打、打点2冠の“打ち出の小づち”で悪夢を振り払った。「目先の上位のチームに対して勝たないといけない。1戦1戦負けられない試合が続くので最後まで必死で戦います」。2位ロッテまで5ゲーム差。逆転劇をおとぎ話で終わらせない。【桑原幹久】

▽楽天三木監督(浅村に)「同点でチームが苦しい時に大きな1発だった」

▽楽天石原(9回に適時打を放ち2年目で初打点)「試合前に(鈴木)大地さんにアドバイスをいただいていたので、走っている時は大地さんの顔が浮かんでいました」