ソフトバンク和田毅投手(39)が「優勝決定試合」で勝利投手に輝いた。2位ロッテとの直接対決を6回3安打無失点にまとめ、今季8勝目。1980年度生まれの「松坂世代」では阪神藤川、楽天渡辺直が今季限りでの引退を表明する中、健在ぶりを示すピッチングだった。

1回の初球143キロ。39歳和田のストレートに、先頭打者、20歳藤原のバットが空を切った。ベテラン左腕のボールからこの試合に懸ける鬼気迫る思いがあふれ出た。「実は初めてなんです」。優勝マジック2で迎え、勝てば優勝が決まる一戦。プロ18年目のチーム最年長、経験豊富な男でも初めてのマウンドで躍動した。

藤原の空振り三振から初回は3者凡退。この日最速146キロの直球とスライダー、チェンジアップ、打者2巡目からはカーブも織り交ぜ、ロッテ打線を手玉に取った。5回2死二、三塁のピンチもしのぎ、6回は1番からを3人斬り。6回無失点で盤石のリリーフ陣にバトンを託した。

前回優勝の17年は左肘手術による長期離脱があり登板は8試合。16年に米大リーグから復帰して以降、初めてシーズンを通してリーグ制覇に貢献した。「戻ってきてから初めて開幕から投げさせてもらい、ようやくこうやって優勝という場に携わって投げさせてもらえる」。18年は1試合も投げられなかった左肩痛を克服し、若き日のような輝きを放っている。

投げるだけではなく、存在そのものがチームの宝だ。一回り年の違う千賀が思い悩んだ時期は、自身の経験を伝えた。17年から自主トレに同行させている後輩左腕の笠谷は今年、谷間の先発などで頭角を現し、プロ初勝利を挙げるなど欠かせない存在に育った。

くしくも1年目の03年、阪神との日本シリーズ第7戦で日本一に導く完投勝利を挙げた10月27日。17年後の同じ日に、まだダイエーだった頃から投げ続ける「レジェンド」が新たな栄光をもたらした。【山本大地】