巨人は10月26日のドラフト会議で、育成選手12人を含めてドラフト史上最多の19人を指名した。FAや大物外国人など、これまで幾度となく大型補強が話題になったが、球団が目指す方向性に変化が出てきている。

編成部門を主導する大塚淳弘球団副代表(61)は「今までお金で優勝とか言われていたじゃないですか。常勝チームを作り上げるため、球団は『選手の発掘と育成』に大きくシフトしている」と言う。若手育成に優れた大リーグ球団の編成などを丹念に調査。今季はドラフト6位で入団した高卒2年目の戸郷が8勝を挙げ、育成出身の増田大が22盗塁、同じく松原は9月中旬以降2番に定着した。

5年の中期的スパンでチーム改革を目指す巨人の「2023年計画」-。

大塚球団副代表 究極のチーム補強はドラフト。23年までにはきちっとした編成ができるかなと思ってます。中期的に3年から5年先を見据えたドラフト戦略を意識している。スカウティングとファームの育成力は最も重要。その中で常に優勝戦線で戦えるチーム編成を考える上で「FA」「トレード」「外国人」による補強が必要になる。

昨年ドラフトは6人中5人が高校生で、今季は即戦力投手を中心に大学、社会人の指名が7人中5人を占めた。育成選手を歴代最多の12人指名し「3、4年後のドラフト1位を獲得できたと思っている」と原石発掘に手応えを示した。

多種多様な人材。リストアップ作業には、担当スカウトによる通常の視察に加え「現場の目」を重視することで多角化を図った。

昨季1軍投手コーチを務めた水野雄仁氏を4月からスカウト部門に配置転換。ファームでは社会人や大学生などとの交流戦を積極的に組んだ。2軍は昨季より10試合増の12試合、3軍は48試合(雨天中止含む)。実際に対戦したからこそ分かるドラフト候補の力量や特徴を阿部2軍監督、二岡3軍監督らも出席する編成会議で共有した。「もっと確率を上げるにはどうすればいいか。2軍監督、コーチを含めて全員でスカウティング活動をしている」。

6月には小中学生を指導する全国各地の巨人出身者21人と「OBスカウト」契約を結んだ。過去にはソフトバンク千賀、甲斐ら、育成出身選手をドラフト時に見逃した事例があった。情報網を張り巡らせ、他球団のスカウト活動が本格化する前の中学生時点からリストアップ。「隠れた素材型を発掘することが重要。選手の伸びしろは試合や練習視察だけでは分からない。素顔や性格も見極めていかないと」と徹底する。

もちろんスカウト活動の拡充が、すぐに結果に直結する甘い世界ではない。

「AIなどのコンピューターが発達して、優秀な解析ソフトができても選手がどう育つかは予測できない。だから全体のパイを広げ、化ける可能性がある選手を実戦で起用することで、伸びしろを見極めている」

スカウティングとともに、入団後の育成計画がさらに重要度を増している。(つづく)【前田祐輔】