中日吉見一起投手(36)が今季限りで現役引退するという。ものすごいコントロールの持ち主だった。全盛期だった11年、吉見の「ど真ん中直球」を見逃し三振したヤクルト川端慎吾内野手(33)に理由を聞いたことがある。

川端 吉見さんはストライクゾーンの四隅を外さない。ど真ん中直球は逆に盲点になるんです。

追い込まれた打者は通常、どんな球にも対応しようと構える。しかし、その思考からも「ど真ん中直球」を外せた。対戦する打者からでさえ、それほどまでに信頼できる制球力だった。

川端への1球がサインだったのか。投げミスだったのか。今となっては確認のしようがないが、後に(15年)首位打者になるポテンシャルを秘めた若者は、自分なりに工夫して、精密機械を攻略しにいっていた。

実際、川端の対吉見通算打率は3割4分6厘。四隅に来る球を狙い打ちにした成果だ。そこまで得意にした打者でも手の出ないコース。抜群の制球力がゆえに「ど真ん中直球」が甘い球にならない、希少な投手だった。【11年プロ野球遊軍=竹内智信】