矢野阪神、2年目のマネジメントに「喝」!。矢野阪神が終戦を迎えた。貯金5で2位というチーム成績ながら、一度もし烈な優勝争いを演じることなく幕を閉じた。独走した巨人との差は何だったのか。選手個々の数字は決して、巨人独走ではない。となれば…35年前のこの日、阪神日本一を現場で取材した元トラ番で元大阪・和泉市長の井坂善行氏(65)は、「マネジメントの差に尽きる。それは矢野監督、球団に共通した弱点」と指摘する。

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すっかり色あせた「矢野ガッツ」だが、今季一番のガッツポーズがドラフト会議でクジを引き当てた瞬間だったとは、虎党にとっては笑うに笑えないシーズンを象徴している。

コロナ禍の影響で開幕が3カ月も遅れた。シーズンは120試合制で、セ・リーグではCSは見送られることになった。何もかもがシーズン前の構想とは違ってくる異常事態。矢野監督の「野球ができる喜びを感じながら、ファンの方に喜んでもらえる野球をする」という抱負には「予祝」の夢が膨らんだ。

しかし、振り返ってみれば、東京ドームでの開幕巨人3連戦3連敗がすべてといっていいようなシーズンになった。不安のあった2番近本は機能せず、さらにいうなら梅野、原口、坂本と3試合捕手スタメンを変えた意図はどこにあったのか。捕手出身の監督でありながら、開幕から3試合続けてスタメンマスクが変わるのは、異例というより尋常ではない選手起用といえるだろう。

矢野監督のマネジメントに対する細かな疑問はいっぱいある。もちろん、采配がズバリと的中した試合もあるのだが、失策が多く、送りバントを決められず、決定力不足は就任1年目の昨年から引きずったままの課題である。

あえて、大山を取り上げよう。昨季終盤から4番を外され、今季の三塁は2年目のマルテに決められた。大山は開幕スタメンに名前はなく、シーズン前から外野の練習を指示されている。マルテの故障で三塁での起用が増え、そこで結果を残してきた大山の成長は評価すべきだ。だが、チームのマネジメントからすれば、「ケガの功名」による独り立ちでしかない。

これは、前政権の金本監督時代から気になっていることだが、チャンスを与えた選手が結果を残せないとすぐにファーム行きとなる。プロとしての厳しさといえばそれまでだが、そこにプロとしての見極めはどうなのだろう。個人的には高山らは二軍では打つが、1軍でチャンスを与えられると結果を求めるあまり、自分のバッティングを見失っているように見える。このままでは1、2軍のエレベーター選手で終わってしまいかねないだろう。

超大物のドラフト1位・佐藤輝は内野か外野か。中継ぎから活路を見いだした藤浪の先発ローテはどうか。3年契約の3年目を迎える矢野監督にとって、カギを握るマネジメントは山積している。そして、本社、球団に求められるのは、矢野監督を監督に起用した球団経営上のマネジメントの分析であり、勝てない責任より、勝てない原因を正確に掌握することが第一だということだろう。

◆井坂善行(いさか・よしゆき)1955年(昭30)2月22日生まれ。PL学園(硬式野球部)、追手門学院大を経て、77年日刊スポーツ新聞社入社。阪急、阪神、近鉄、パ・リーグキャップ、遊軍記者を担当後、プロ野球デスク。阪神の日本一、近鉄の10・19、南海と阪急の身売りなど、在阪球団の激動期に第一線記者として活躍した。92年大阪・和泉市議選出馬のため退社。市議在任中は市議会議長、近畿市議会議長会会長などを歴任し、05年和泉市長に初当選、1期4年務めた。現在は不動産、経営コンサルタント業。PL学園硬式野球部OB会幹事。