早大が逆転優勝に王手をかけた。楽天ドラフト1位指名の早川隆久投手(4年=木更津総合)が5安打1失点15奪三振の完投勝利を決め、首位に立った。8日の2回戦に勝つか引き分けで、15年秋以来10季ぶり46回目の優勝が決まる。慶大は、ヤクルト1位指名の木沢尚文投手(4年=慶応)が7回4安打3失点で敗れ、2位に後退。昨秋以来38回目の優勝には、2回戦で勝つしかない。

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三振で、緊張から解放された。2点リードの9回2死一塁、早川は慶大・藤元をチェンジアップで空振り三振。毎回の15個目を奪うと思い切りグラブをたたいた。「負けたら終わり。死に物狂いで投げました」と胸を張った。自らにプレッシャーをかける一方、同じドラ1の木沢との投げ合いには「自分らしい投球をすればいい」と冷静を貫いた。最速151キロに緩急を交え、連打を許さなかった。

今季、5大学全てから勝利を挙げ、防御率0点台と圧倒する。だが、慶大戦は今春まで通算1勝4敗、防御率5・15。早慶戦デビューの1年春1回戦では、柳町(現ソフトバンク)に満塁弾を浴びた。「トラウマになるような。もう投げたくないと、慶応への苦手意識が強くなりました」。しかし、こうも思った。「あの1発で大学のレベルの高さを痛感しました。このままじゃダメだと」。3年秋にリリーフで慶大戦初勝利。そして、この日の大一番で先発初勝利。早慶戦の成績は、4年間の成長曲線と一致する。苦手があったから、大きくなれた。

伝説の早慶6連戦から60年。「縁を感じます」。1週間前、チームメートと6連戦の映像を見た。主力だった徳武ヘッドコーチから、裏方も含め全員で戦った話を聞き「早稲田の一員として集大成の早慶戦に勝つ」と意を強くして臨んだ。

2回戦の9回裏を締めれば優勝する。「(慶大に先発初勝利で)自信にはつながりますが、明日もある。謙虚に臨めたらいい」と表情を崩さず言った。喜ぶのは、あと1つ勝ってからだ。【古川真弥】

▽早大・小宮山悟監督(早川の連投を宣言)「守りは任せきりで、攻撃のことだけ考えていた。いろいろな投手を見てきたが、左投手でNO・1。明日、最後のマウンドは早川でいきます。引き分けかリードしていれば、9回裏、最後は早川で優勝したい」

◆早慶6連戦 60年秋の早慶戦で早大が2勝1敗として慶大と勝ち点4、9勝4敗で並び、続いて両校の優勝決定戦が行われた。当時の神宮球場に照明設備はなく、決定戦1、2戦目は延長11回日没引き分け。3戦目に早大勝利。6試合で計38万人の観衆を集めた。