今年のプロ野球ドラフト会議では、育成を含め123人が指名された。近大・佐藤輝明内野手(4年=仁川学院)と早大・早川隆久投手(4年=木更津総合)が4球団ずつ1位指名で競合し注目されたが、プロのスカウトの目には、どう映ったのだろう。

「ドラフト感想戦」として、主に他球団の指名について、複数球団のスカウトに匿名で語ってもらった。上下2回でお届けします。【取材・構成=アマチュア野球取材班】

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佐藤、早川に人気が集中したのは、スカウトの人たちには想定内だった。驚きは、別のところにあった。

【ソフトバンクの高校生連続指名】

多くのスカウトが真っ先に挙げたのは、これだ。1位で佐藤を外すと、外れで高校通算50本塁打の花咲徳栄・井上を単独指名。2位は同40本塁打の横浜商・笹川、3位は強肩捕手の日大藤沢・牧原、4位は攻守に秀でた青森山田・川原田と高校生野手を4人連続で指名した。5位は投手だったが、履正社・田上と、やはり高校生だった。

「内川の後釜や、松田、今宮の世代交代というビジョンが見えた」

「次の次の世代を獲得して、先を見越した補強という意思が見えた」

称賛の一方で、指名順位には率直な感想もあった。

「賛否あると思う。1位、2位は、うちとは違う評価。高校生野手を育てる自信があるのだろう。ソフトバンクには、育成からはい上がった例がある」

「自分は評価できなかった選手もおり、勉強になる。ただ、うちが過去に指名した選手でも、周りから『なぜ?』と言われながら活躍した人はいる。ドラフトは5年後を見て取るもの」

【西武1位渡部】

指名に他球団の評価は関係ない。あくまで、自分たちが欲しい選手を取るのがドラフトだ。西武の1位指名にも驚きの声が続いた。あるスカウトの分析が興味深い。

「欲しい選手は指名順位を上げるということ。去年も同じ現象が起きた。楽天小深田。ソフトバンク佐藤。2位だと残っていないと考えたのだろう。球団の編成ニーズは、それぞれ」

別のスカウトも「驚いた」と認めた上で続けた。

「戦略を練った中で取りにいったと思う。西武イズムだ。ドラフトは評価してナンボではない。取ってナンボ。2位だと取れないと判断したのだろう。絶対に取りたい選手なら1位でいくしかない。逆に、自分たちは上位で評価していても、他球団が評価していなければ下位でも取れる」

【想定より下位指名】

指名順位と評価は必ずしも一致しない。他球団の指名で、想定より下位の例を挙げてもらった。

「中日3位の近江・土田。DeNA4位の履正社・小深田。関西の高校生野手が思ったより低かった。それだけ、各球団が投手を取りにいったということ。大学生に好投手が多かったこともあるだろう」

「西武5位の福岡大・大曲。5位で取れたのはラッキーでは。球に力がある」

「阪神5位の東洋大・村上。ドラフト前にケガしたが、投げられていれば3位はあったと思う」

「巨人7位の創価大・萩原。打撃がよく、もう少し上でかかるとみていた」

当該球団にしてみれば、下位で取れて成功と言えるだろう。(つづく)