ソフトバンクの選手会長、中村晃外野手(31)が4年連続クライマックスシリーズ(CS)突破に導いた。

3点を先制されたが、2回に反撃ののろしを上げる2ランを放つと、4回にはプロ初の2打席連続となる逆転の2ランを放って最優秀選手賞を獲得した。チームはポストシーズン12連勝の日本記録を更新。21日から4年連続日本一をかけ、昨年に続き巨人との日本シリーズに挑む。

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確かな手応えに、思わず左手を上げた。チームを勝利に導く打球が右翼席で弾んだことを見届けた中村晃は、今度はベンチに向かって右手を上げ、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。1点を追う4回1死二塁で飛び出た逆転2ランは、自身初のCSのMVPというご褒美にもつながった。

中村晃 勝ちたいという思いが出たと思います。みんなでつかんだ2勝でした。MVPは取ったことがなかったのでうれしいです。

初回に3点を先制されたいやなムードを振り払ったのも、この頼れる男だった。2回1死一塁で今CS初アーチとなる2ラン。1点差に迫り反撃ムードを高めると、プロ初の2打席連発で試合をひっくり返した。CSでは16年から5年連続8本目のアーチと短期決戦での勝負強さを見せつけ、チームのポストシーズン12連勝の日本記録更新につなげた。

1番周東の盗塁がクローズアップされるなか、2番打者としては、なかなか早いカウントで打ちにいくことはなかった。「周東の記録がかかっていた時は優先させていた」。この日は、ロッテ先発が左腕チェン・ウェインだったこともあり、7番での起用。「基本的には初球からどんどんいきたいと思っている」という言葉通り、1本目は初球、2本目はカウント2-0からと、ともにファーストストライクをフルスイングした。

激動の選手会長1年目だった。新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れた。自身も膝を痛めた影響で、1軍昇格は7月11日だった。しかし、その後は時に4番も務めるなど勝利に貢献。さらに9月に他界した川村隆史3軍コンディショニング担当(享年55)のユニホームをベンチに飾ることを提案し、グラウンド外でもチームをまとめる役を担った。「ここまでみんなが頑張ってやってこられたのは、ボク自身も自信になったし、選手会長になってよかった」と胸を張った。

最終的な目標、4年連続日本一を狙う舞台を手にした。巨人しか経験していない偉業に、その巨人相手に挑む。「巨人もやり返すつもりでくる。僕らも挑戦者という意識を強く持っていきたい」。チームのために身を粉にして動き回る背番号7が、最終ステージまでチームのためにバットを振り続ける。【浦田由紀夫】

▽ソフトバンク岩崎(3番手で6回に登板し1回無失点) 上位打線だったので、流れを渡さないようにしっかり投げられた。

▼中村晃が2打席連続本塁打。プレーオフ、CSで1試合2本以上の本塁打は16人、18度目。中村晃は2本とも2ランで、走者を置いて2発は73年<2>戦住友(阪急)08年2S<2>戦小笠原(巨人)19年ファイナルS<4>戦今宮(ソフトバンク)に次いで4人目だ。これで中村晃はCS通算8本塁打となり、プレーオフ、CSの通算本塁打が歴代3位タイ。過去に通算8本以上の6人は公式戦でも通算150本以上打っているのに対し、中村晃は公式戦で46本だけ。公式戦では22・3試合に1本の打者が、CSは4・8試合に1本の長距離砲に変身する。

▼4回は中村晃→松田宣が連続本塁打。プレーオフ、CSの2者連続本塁打は15度目。17年ファイナルS<4>戦では内川→中村晃、18年1S<3>戦ではデスパイネ→中村晃があり、連続本塁打に3度もかかわっている打者は中村晃だけ。