FA権を行使せず残留を発表していた広島田中広輔内野手(31)が17日、広島市内のマツダスタジアムで契約交渉を行い、現状維持の1億5000万円プラス出来高の2年契約でサインした。今季は右ひざ手術から復帰し、正遊撃手として112試合に出場。選手会長としてコロナ禍で動揺するチームをまとめた。複数年契約を結び、選手会長2年目の来季はチーム再建にプレーと言動で引っ張っていく。

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1時間超の交渉はほぼチームのことに費やした。田中広は自分のことはすでに、FA権を取得してから球団とは何度も話し合ってきた。1億5000万円プラス出来高の2年契約で契約を更改。チーム再建のために、鈴木球団本部長とひざを突き合わせた。

「やっぱり強いカープをみなさんに見せられたらいいなと思います。優勝を目指して、そして日本一に届くようにやっていきたい」

選手会長を務めた今季、新型コロナウイルス感染拡大によって開幕延期や無観客試合など大きな影響を受けた。未曽有の事態にも、動揺するナインをまとめ、規律を保った。医療従事者への感謝とともに「本当にあらためて満員のお客さんの中で野球ができる幸せを感じた1年でもあった」と振り返った。

右膝手術から復帰した今季、112試合で打率2割5分1厘、8本塁打、39打点、8盗塁だった。「数字の面ではひとつも満足していない。最後までプレーできたことは安心材料かなと思います」。復調への1歩をしるしたに過ぎない。

今季終盤、患部の状態の上向きとともに成績は上昇した。9月以降は打率2割9分、7盗塁。来季へ確かな手応えを得た。「もう1回、走りたいなという思いはあります。キャリアハイを目指しているので、1つでも多く走りたい」。自己最多は盗塁王を獲得した17年の35盗塁。自分超えとなれば、2年連続タイトルホルダーの阪神近本にも対抗できる。

チーム再建には、意識改革も求められる。「自分の結果はもちろん大事なんですけど、みんながもう少しチームのためにプレー出来たらいいんじゃないのかなと。しっかりと突き詰めてやっていきたい」。3連覇したときのような一丸となって目の前の勝利をつかみにいく姿勢を求め、自ら言動でも示していく。(金額は推定)【前原淳】