投手王国を作り「打倒ソフトバンク」を目指す。来季から1軍投手コーチを務める巨人杉内俊哉コーチ(40)が20日、所信表明した。

元チームメートのソフトバンク和田とともに、7月に豪雨被害を受けた熊本県人吉市を訪問。地元の小学校では児童たちに対して“夢教室”を開き、自身の夢を力強くペンでしたためた。

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「杉内先生」は迷いなくペンを走らせて「打倒Softbank Hawks」と書いた。「あまりにも強すぎるんでね。なんとかホークスのような投手陣に勝てる投手王国を作りたい」と夢を発表した。古巣でもあるソフトバンクは日本シリーズ4連覇中で、ここ2年、巨人との同シリーズ8戦合計スコアは49-14。圧倒されている王者へ立ち向かう。児童たちが「プロ野球選手」「大富豪」「ユーチューバー」と純粋な目で発表する姿と同じように、野球少年のような真っすぐな目をしていた。

被災して大変な思いをしているであろう児童たちを勇気づけるかのように、こうも言った。「うまくいくときもあればいかないときもある。遠回りするかもしれない。おれもそうだった。でも常に目標は持っておくこと。原監督はよく『全てのことを糧にしなさい』と言う。下を向かないこと。怒られても、泣いても上を向くこと。それが大事なんだ」。児童たちは杉内先生の言葉に、静かに聞き入った。

豪雨被害を受けた現場の姿にはショックを隠しきれなかった。1階部分が根こそぎなくなっている建物。破壊された橋。深くえぐられた球磨川沿いの崖。1つ1つ丁寧に視察し、説明に耳を傾けた。「かなり衝撃を受けました。熊本は巨人ファンが多いと聞きましたので日本一になって、被災地のみなさんが笑顔になれるようにしたい」と引き締めた。

原監督からは就任にあたり「村田と杉内の2人で新しい風を入れてくれ」と声をかけられた。今季ともに2軍のコーチを務め、来季から1軍に加わる2人にかかる期待は大きい。杉内コーチは「選手、周りのコーチ陣に臆することなく意見を言おうと思ってますから」と力を込めた。投手王国を作り上げて「打倒ソフトバンク」の夢をかなえる。【小早川宗一郎】

○…熊本県人吉市は巨人の監督でV9を達成した川上哲治氏の出身地で、巨人とゆかりが深い地域だった。今年は川上氏の生誕100年で、この日は川上哲治記念球場で地元の少年野球チームを対象に野球教室が行われた。杉内コーチは「小学校ぐらいまでは楽しく野球をして、野球の楽しさ、面白さを自分の肌で実感してもらうことが一番大事。楽しくのびのびしてほしい」とエールを送った。