巨人山口寿一オーナー(63)がコロナ禍に苦しむ球界で、来季のDH制暫定導入をあらためて訴えた。都内で取材に応じ、来季も新型コロナウイルスの収束が見通せない中で、選手の負担軽減のためにセ・リーグも暫定的に導入する必要性を主張。将来的な導入の議論発展とは線引きした。14日のセ・リーグ理事会で文書で提案したものの他球団が反対し、見送りとなる流れだったが、開幕から約2カ月の限定採用の新案なども含め、1月の同理事会で再検討を働き掛ける。

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<DH制を巡る議論の経過>

◆19年10月24日 日本シリーズでソフトバンクに4連敗した巨人原辰徳監督(62)がオーナー報告をした後「セ・リーグにはDH制がないからね。DH制は使うべきだろう。相当差をつけられている感じがある」と提言。教育的な側面でも「レギュラーが9人から10人に増える。少年たちだっていいと思う」と必要性を語った。

◆20年11月18日 ソフトバンクが、コロナ禍で過密日程になったことから投手の故障リスク軽減を理由とし、NPBに日本シリーズの全試合DH制を提案。NPBは翌19日の臨時実行委員会で今年限りの特例として決定し、85年阪神-西武のシリーズ以来35年ぶりの実施を発表した。巨人以外のセ球団から異論も出たが、最終的に斉藤惇コミッショナーが判断した。

◆同25日 日本シリーズでソフトバンクが2年連続の4戦全勝。セのチームは13年第7戦から、日本シリーズのDH制採用試合で21連敗となった。

◆12月14日 巨人がセ・リーグ理事会で、来季の暫定的なDH制導入を提案。山口寿一オーナー名で、コロナ禍の中で投手の負担軽減、多くの野手に出場機会を与えるなどの理由を挙げて提案書を提出したが、賛同を得られず見送られた。

<DH制の歴史>

MLBのア・リーグが73年に導入。ナ・リーグ人気に負けられないと、アスレチックスのフィンリー・オーナーが発案し、他のオーナーも賛成。観客は前年から200万人増え、打率、本塁打もアップと効果を発揮した。日本では2年後の75年、人気回復を狙ったパ・リーグが採用。打率は前年から8厘、本塁打も23本増え、投手も代打を出されることがなくなり完投数が197→302と1・5倍となった。パは今年で導入から46年となったが、セでは1度も採用に至っていない。またDH制以前の69年11月に行われた東西対抗戦では、投手に代打が出てもその投手が続投できるルールを採用。今のDH制に似たようなもので、西軍の三原脩監督(近鉄)が提案して実施された。

《巨人オーナーがDH導入の再検討訴え 長嶋氏も賛同》

《巨人のセDH制導入の提案、危機へ同じ目線が必要》