巨人名手の血を入れ猛虎革命だ。阪神の今春キャンプで臨時コーチを務める川相昌弘氏(56)が17日、少年野球大会「川相昌弘杯」がコロナ禍で中止になったことを受けてオンライン取材に応じ、虎の守備力改善に強い意欲を見せた。

巨人での現役時代に遊撃部門で6度のゴールデングラブ賞を受賞した名手は、基本練習の重要性を力説。昨季まで3年連続12球団ワーストの失策数について、「何十個かは減る」と自信をのぞかせた。

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川相氏はすでに3年連続12球団ワースト失策数の分析を進めていた。球団にDVD作成を依頼し、12月末に「昨年のミスをしているところが中心の映像」を取り寄せ。結論は「大半はイージーミス」だった。

「普通にきっちりプレーすれば、エラーは何十個かは全然減る。日頃の意識、練習への取り組み、そういうところをきっちりやっていけばエラーは十分減る」

かつての名手は冷静に力強い言葉を並べた。

虎の16年ぶりV奪回へ、守備力強化は避けては通れない難題だ。昨季もチーム85失策。課題克服への覚悟が、宿敵の要人への臨時コーチ就任打診につながった。川相氏は巨人で長年活躍して1軍ヘッドコーチ、2軍監督も歴任し、読売新聞スポーツアドバイザーでもある。本人も「正直驚いた」というが、オファーの重みを感じ取り、ライバルに力を貸す決意を固めた。

今、特に改善したいポイントが2つある。

<1>一塁守備力 昨季はボーアとマルテの2人で計15失策。今季は昨季左翼を主戦場としたサンズを筆頭にマルテ、陽川、原口が争うが「一塁にミスが多いと野手の送球にプレッシャーがかかる。誰が入るにしても一塁守備は近代野球の中ですごく重要」。落合政権時の中日では一塁の名手、渡辺博幸ともプレーしており「心強かった」。

<2>守備固め 昨季は途中出場選手の失策も少なくなかった。「主力がアクシデント、事情で交代した時にフォローする人たちの守備力向上もすごく重要」。

今春は2月1日から18日まで臨時コーチを務め、19日以降もタイミングが合えば指導する。名手の長期滞在は頼もしい限りだ。

中日コーチ時代には井端弘和、荒木雅博、巨人コーチ時代には坂本勇人の進化を見届けている。川相氏は晩年も基本的なゴロ捕球を大切にしていた井端を例にあげ、「足をしっかり使って基本に忠実に毎日やっている姿を見て、一流なんだなと。そういう選手に少しでも近づいて欲しい」と力説。今春、守備のスペシャリストが虎の内野陣を変革する。【佐井陽介】

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川相氏は毎年恒例となっていた野球大会の中止を残念がった。地元の岡山で開催していた「川相昌弘杯少年野球交流大会」は今年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止に。「コロナが岡山辺りも段々増えてきているし、なるべく人を集めない方がいいだろうということで中止になりました」と説明した。

◆川相昌弘(かわい・まさひろ)1964年(昭39)9月27日生まれ、岡山県出身。岡山南から82年ドラフト4位で巨人入団。04年中日へ移籍し、06年引退。通算1909試合、1199安打、43本塁打、322打点、打率2割6分6厘。通算犠打533はプロ野球最多。遊撃でゴールデングラブ6度、ベストナイン1度。現役時代は176センチ、75キロ。右投げ右打ち。07~10年中日で、11~18年は巨人でコーチや2軍監督などを歴任。巨人1軍ヘッドコーチとして坂本の指導に取り組み、4度のゴールデングラブ賞へと導いた。