95年の阪神・淡路大震災から26年を迎えた17日、阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)がオンライン取材に応じ、震災への思いを語った。まだ生まれる前の出来事だが、地元兵庫を襲った大惨事を思うと胸が痛んだ。新人合同自主トレ先の鳴尾浜で、同僚選手ら約50人と黙とうをささげた。11年の東日本大震災後、東北に希望を届けた楽天田中将大の活躍を引き合いに、故郷を明るく照らす全力プレーを誓った。

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寒空の鳴尾浜で、佐藤輝は静かに目を閉じた。「被災して友達や親族を亡くされた方もいると思うので、そういう方たちに感動を。そういうプレーができたらいいかなと思います」。今なお、傷が癒えない人も多くいる。その人たちのために、何ができるのか。自身に問いかけ、全力プレーで、生まれ育った故郷に勇気と感動を与えると誓った。

まだ生を受ける前に起こった悲劇だが、身近に触れてきた。小学から高校は西宮市内の学校に通い、授業などで震災の記憶と向き合った。「学校でいろいろ話を聞いて、すごい大変だったんだなというのは感じたことがあります」。

宮城にいる父方の祖父母は11年の東日本大震災を経験。直接的な被害はなかったというが、「いつどこでそういうことが起こるか分からない、いつ死ぬか分からない。後悔がないようにという風には思ったりします」。野球ができる喜びをかみしめながら、毎日を過ごしている。

プロ野球は、苦しむ人たちに勇気を与える存在であり続けてきた。佐藤輝に印象深く刻まれているのは、楽天田中将大の大活躍だ。東日本大震災から2年後の13年、シーズン24連勝を記録してチームを初のリーグ優勝と日本一に導いた。「すごいピッチングでチームが優勝して、すごい勇気を与えたと思う。僕らもそういうことができればいいかなと」。バットでマーくん級の活躍を目指す。決意を新たにした1日になった。

新人合同自主トレは第3クールに突入し、2月のキャンプインに向けた準備も着々と進んでいる。「体も張ってきたので、そこはしっかりケアしながら。徐々に動けるようになってきて、準備はしっかりできています」。心身充実で2月1日を迎えられそうだ。

16年ぶりのリーグ優勝は、阪神ファンの誰もが待ち望む。26年前、阪神大震災が起きた95年は佐藤輝が憧れるイチロー氏率いるオリックスが「がんばろう神戸」を合言葉に優勝し、関西を明るく照らした。「プロ野球なので、ファンの方に喜んでもらうのが一番だと思う。そこはしっかり頭の中に入れてやっていきたいです」。プロ野球選手の使命を胸に刻み、快音で歓喜をもたらす。【奥田隼人】