元阪神監督で日刊スポーツ評論家の真弓明信氏(67)が好評企画「解体新書」で今季遊撃レギュラーを争う小幡竜平内野手(20)の打撃フォームを解析した。昨年は高卒2年目ながら、1軍デビューを果たし、28安打を記録。飛躍が期待される21年シーズンの課題を語った。【取材・構成=田口真一郎】

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打撃フォームは、目立って悪いところはない、という印象だ。器用なタイプで、バットコントロールにセンスを感じる。いいスイングをしているという感じはある。

写真を見れば、外角のボールを逆方向に打っている。それを考慮しても、もう少しバットがボールに対して、最短距離で出てきてもいい。(4)(5)の部分だが、外角球だからかもしれないが、少しバットが遠回りしている。試合にずっと出ていると、相手投手も速球や遅い球、変化球で崩そうとしてくる。その中で、バットが遠回りしがちになる。打者というのは、調子が悪くなり、ヒットをほしくなると、テークバックの動作が大きくなる。ボールの軌道に、水平にバットを入れたくなると、遠回りするんだ。それが(4)(5)(6)にかけての動きだ。

それでも、「いいな」と思うのは、打った後にしっかりと足を使っているというところ。右膝を柔らかく使えている。これがあれば、体が泳がされても外角の球に体重が乗っている。意識してバットを伸ばせている。非常にいいことだ。

フォームの分析で、たまにやるんだけど、写真を反転させて、裏側から見ると、分かることがある。この写真を裏返して右打者として見ると、(6)のあたりで腰が開いている。佐藤輝の分析でも話したことがあるが、右投げ左打ちの打者は、右が強いこともあって、右側の腰を使いすぎてしまう。アウトコースのボールをここまで開いてつかまえにいく必要はない。左足、左膝でつかまえにいけば、体は開かないが、これでは開いてしまう。(6)の写真だけ見ると、外角球にかかわらず、引っ張っているようなフォームに見える。これでは大きな打球、力強い打球を逆方向に打てない。

小幡は遊撃のレギュラー候補だが、打撃というのは、試合に出ていると、経験で打率というのは上がってくる。若いうちに守備を徹底的に鍛えて、自信をつけるほうが、バッティングも伸びてくると思う。特にショートというポジションだから、そういうことが言える。守備の能力もある。特にスローイングがいい。肩の強さ、スローイングの安定性がショートを守る選手の条件になる。それを持っている。守備の安定、そして走力もあるのだから、走塁面でも、欲を出してほしい。

昨年は1軍に出て1年目だったが、1軍にいると、疲れで体の切れが悪くなる。バットが重くなると、上体に余計に力が入ってしまって、振れなくなる時期も出てくる。とにかく下半身を鍛えて、少々疲れても、下半身のキレだけは変わらない、というところまで持っていってほしい。遊撃争いは、木浪の他にも北條、熊谷らがいる。ショートで争って、漏れたからセカンドにいくという甘い考えは持たないほうがいい。絶対にショートでレギュラーを取るという強い気持ちでキャンプに臨んでほしい。

◆虎の遊撃争い 現状、木浪が1歩リードか。プロ1年目の19年に遊撃で98試合出場。昨季はチーム内のコロナ禍で球団独自の濃厚接触者に指定されて一時離脱しながらも、遊撃91試合出場。2年連続でチームで最も多く遊撃を守っている。木浪に続く有力候補が北條、小幡。北條は19年に遊撃で46試合出場も、昨季は腰痛にも苦しんで遊撃19試合出場にとどまった。小幡は高卒2年目の昨季、遊撃でチーム2位の33試合に出場。走力に秀でた熊谷、即戦力ルーキーのドラフト6位中野、巨人から移籍の山本もダークホースだ。