阪神藤浪晋太郎投手(26)が25日、鳴尾浜球場でワインドアップの新フォームを披露した。近年はセットポジションからの投球が基本。昨季終盤は重心を下げて投げるスタイルに手応えをつかんでいたが、今オフは20年モデルをベースにさらなる改良に挑戦している。現状維持ではなく進化-。その向上心あふれる勇気に、長年取材を続ける記者が注目した。

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藤浪が快晴の鳴尾浜で振りかぶった。気温10度を優に超える陽気にも後押しされ、ドラフト4位栄枝を座らせて72球。投球後の代表取材では「投げられるなら、今年は振りかぶって投げようかなと思ってます」とサラリ。その勇気、向上心に最初は正直、驚いた。

さすがに今オフに大きくフォームを変えることはないだろうと、勝手に想像していた。復調を印象づけた昨季終盤のセットポジション投法に、他ならぬ本人が手応えを感じていたからだ。

昨年10月19日ヤクルト戦では球団最速162キロを計測。「腰高になると、どうしてもタイミングが合わなかったりするので…」。左足を上げる際、ピンと真っすぐだった右足を「重心を低くするイメージで」少し曲げる。秋に納得したはずのフォームに今冬、さらなる変化を施したのだ。

ただ、藤浪自身は始動の違いを見た目ほど大げさにはとらえていないような気もする。この日は「去年の延長線上か」と問われて「そうですね」と返答。「もっとリズム良く投げられるフォームというところで」と説明した。本人からすれば、昨季のスタイルをベースに改良中、というだけのことなのかもしれない。

プロ1年目の13年途中までは振りかぶり、19年春季キャンプでも再びワインドアップを試したが、近年はセットポジションが基本だった。本人いわく、振りかぶるデメリットは「動作が多くなるので癖が出やすくなる」。メリットは「勢いがついたり、投げるタイミングだったりリズムが合う」。今回は、気がかりな点を補って余りあるプラス効果が期待できると判断したのだろう。

すでに年明けからブルペン投球を継続しており、この日は変化球も投げた。「ある程度ボールもつかまえられていますし、いい感じで投げられている。もうちょっと球質、変化球の質、クイックとかいろいろやらないといけないですけど、全体的にはいいラインが出ている」と充実感を漂わせる。

今後は沖縄の先乗り自主トレ、1軍キャンプでも投球を続け、仕上がり具合に納得できれば新フォームを採用する見込み。「結果を出さないといけない立場。アピールするのは前提で、自分の納得のいく、これならやっていけるというモノを出せるようにしたい」。現状維持を良しとせず進化の道を選んだ藤浪。21年に懸ける覚悟がヒシヒシと伝わってくる。【佐井陽介】

◆藤浪の投球フォーム 大阪桐蔭3年時はワインドアップを軸に甲子園春夏連覇。プロ入り後も1年目の13年途中までは振りかぶっていたが、左肩が早く開く癖を修正するため、同年8月からセットポジションに変更。14年途中にはノーワインドアップを経験。19年春季キャンプではワインドアップも試したが、近年はセットポジションが基本となっていた。