我以外皆我師-。阪神梅野隆太郎捕手(29)が「宮本武蔵流」で30歳シーズンに挑む。26日に代表取材に応じ、沖縄県内で行っていた自主トレの収穫を語った。昨季28本塁打の大山悠輔内野手(26)に打撃のアドバイスを求め、新メンバーのDeNA山本祐大捕手(22)からはスローイング技術を吸収。年下の選手からどん欲に学ぶ剣豪・宮本武蔵さながらの境地で、自らに飛躍を求めた。

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年上も年下も関係ない。自分以外のすべてが師匠だ。梅野が沖縄の自主トレで貪欲に学んでいた。「本当に暖かい地でしっかり動けて、体の状態もいいとは思うし、しっかりできたかなと思います」。その表情に充実感を漂わせた。

岩崎、大山に加えて、新たにDeNA山本が参加。ブロッキングなど梅野が助言を送る一方で、7歳下の捕手から新たな発見があった。「肩が強いから慌てなくて、シンプルに捕ってからの上下動が少ない。もっと安定するためにはこれも必要やなって、見てて思った。そういう意味では他のキャッチャーを見るのは大事かなって」。梅野は捕球からスローイングに移る際に、上体が起き上がってしまう時があることを自覚。捕ったままの姿勢で投げる山本を見て、安定性向上の秘訣(ひけつ)を得た。

虎の4番を張る後輩も「先生」になった。昨季28本塁打を放った大山からは、打撃についての考えや意識をじっくり聞いた。一番の学びはタイミングの取り方。「引き出しというか、『何パターンか自分は持ってます』と。同じようなフォームに見えても、タイミングを取ってるところが違うっていうのは参考になった」。2月のキャンプインを前に収穫は多かった。

プロ8年目、今年30歳を迎えるシーズン。名実ともにチームの顔となったが、慢心はない。「上下関係なくお互いに聞ける環境でやってたので、良かったかなと思います」。年齢もキャリアも関係ない。技術向上へ素直に耳を傾けた。我以外皆我師-。作家の吉川英治が著書「宮本武蔵」で記した言葉だ。自分以外の全てを師匠にする、貪欲な姿勢は大きな武器になる。

密度の濃い守備練習を終え、肩の仕上がりはばっちり。打撃は大山の助言も参考に、実戦を重ねてどんどん上げていく。「自主トレの時間っていうのは2週間ぐらいですけど、すごく大切な時間だと自分自身も思ってるし、引き出しとしても」。多くの学びを胸に、充実のシーズンにする。【磯綾乃】

◆山本祐大(やまもと・ゆうだい)1998年(平10)9月11日生まれ、大阪府出身。京都翔英-BC・滋賀を経て17年ドラフト9位でDeNA入り。新人の18年5月に1軍デビュー。同年8月の広島戦で初打席初本塁打。19年は13試合に出場し、サヨナラ打も放ったが、昨季は2試合の出場にとどまった。180センチ、82キロ。右投げ右打ち。

◆宮本武蔵 江戸時代初期の剣豪で、二刀流で知られる。剣のあり方を記した兵法書「五輪書」(ごりんのしょ)も執筆。特定の師を持たずに諸国を渡り歩き、剣の道を究めるために生きたともされる。山口県下関市の関門海峡にある巌流島(がんりゅうじま)で、佐々木小次郎と決闘した話が有名。作家の故吉川英治氏の代表作「宮本武蔵」では「我以外皆我師也」という言葉を残している。

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