ピッカピカの“1勝”です! 楽天石井一久GM兼新監督(47)が13日、就任後初の対外試合となるロッテとの練習試合を快勝した。外野の定位置を争う辰己、小郷、開幕1軍を狙う石原らが打棒を振るい、11安打8得点。投打がかみ合い、初陣をとった。球場内外でコミュニケーションを重視する新指揮官。三木谷オーナーも観戦に訪れる中、愛情を注ぐ若鷲たちの躍動で、力強く一歩目を踏み出した。

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目尻を少し下げた。西日を背にする一塁側ベンチ前。石井GM兼監督は柔和な表情でナインを出迎えた。「まずベンチが西日じゃなくてよかった。野球をやっていないのにグラウンドに出るのは恥ずかしい」。8年ぶりのユニホーム、監督としての初陣。トークにも初々しさがにじんだ。

序盤はちょっぴり、よそよそしかった。試合前ミーティングで「頑張ろう!」と声を張った。小ぶりなベンチの本塁側最深部に身を置き、立ったり座ったり、腕を組んだりほどいたり。あめを10個なめ「このペースでいったらやばい」。選手交代の申告も「見よう見まねで」。真喜志ヘッドコーチはじめ、自身を囲む首脳陣とこまめに言葉を交わし戦況を見つめた。

両軍無得点の4回。若きイヌワシの躍動、雄々しいベンチの声に表情が緩んだ。辰己が右中間三塁打でのろしを上げ、小郷が先制打。6番石原が左中間を深く破り、96キロを揺らし三塁を陥れた。満面の笑みで手を5度たたき「『今年は絶対に1軍にしがみつくんだ』という姿勢を見たかった。気持ちを出してくれた」。

理想の監督像はない。ただ、現役時代に仕えた3タイプの監督が記憶に残る。

「野村(克也)さんは本当に端から端まで細かくやる。渡辺(久信)監督は、任せたぞという中に自分の芯をしっかりしてなきゃ、というものを芽生えさせてくれた。若松(勉)監督はこの人のためになんとか優勝したいという気持ちにさせてくれた」

指導歴もない。固定観念にとらわれない。ただ一貫して「コミュニケーション」に重きを置く。

立場を問わず歩み寄る。午後5時すぎまで続く特打も視察し、最後の球拾いを手伝う。「野球でもコミュニケーションがとれたら」と打撃投手の準備も進める。全体練習開始前に球場外周を25分ほど走り込み、ブルペンで肩も作る。「より近いところで選手とコミュニケーションを取って、目標を達成できるようにしていくのが監督だと思う」。マー君だけじゃない。イーグルスの全員が萎縮せず、けれん味なく暴れる環境作り。描く監督像に徹し、上々の船出につなげた。

GMとして分厚い戦力を整えた。底上げが覇権へ直結する。「やっぱり情が湧くじゃないですけど、みんな一生懸命。何とかチャンスを与えたい」。試合中は雨が降ったりやんだり。試合後は門出を祝うように日が差した。【桑原幹久】

▽楽天滝中(チーム対外試合初戦に先発し、2回を無失点)「真っすぐをきっちり投げられたし、カーブのかかりとバッターの反応も良かった。やりたいことをできたので良かったです」

▽楽天津留崎(菅原が負傷降板し、緊急登板で2回無失点)「マウンドに上がってから肩を作った。シーズン中もこういうことが起きる可能性があるので、その練習だと思って上がった」

▽楽天渡辺佑(横手投げに転向後、初の対外試合で1回を3者凡退)「真っすぐでかなり押せた。第1印象はとても重要だと思ったので、しっかり投げられたことは良かったです」

▽楽天小郷(先制打で石井GM兼監督に対外試合初得点をプレゼント)「辰己、(田中)和基さんがつないでくれたので、何とかかえそうと思った。打てて良かったです。オ・ゴー」

▽楽天辰己(4回に三塁打で出塁し、チームの対外試合初得点を記録)「アピールしていかないといけない立場。周りを寄せ付けないように断トツな結果を残して、優勝に貢献できるようにレギュラーでグラウンドに立っていたいです」

▽楽天和田(内野安打2本で1打点)「雨でグラウンド状態も悪かったので、前に打てば何かあると思って食らいつきました。何かありましたね」

▽楽天渡辺佳(5回に中前適時打)「みんなが打っていたので自分も打ってアピールしたいと思って打席に入りました。打てて良かったです」

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