DeNAは15日、前巨人の宮国椋丞投手(28)と育成枠で契約したと発表した。背番号は「106」。

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昨年12月中旬のある夜、宮国は東京・渋谷の公園に向かった。クリスマスを間近に控えた街は、カップルや家族連れ、学生たちが楽しそうに行き交っていた。「自分が今、やることはチャンスをいただけると信じて、準備するだけですから」。周囲に目もくれず、外灯の下でシャドーピッチングを繰り返した。師走の寒さの中、体中から汗がにじんだ。

今までのような環境はなく、野球少年の頃に戻ったかのように、練習場は普通の公園だった。練習に向かう最中、スマートフォンの着信音が鳴った。巨人時代から気にかけてくれ、広島移籍後も公私ともにお世話になる長野久義からだった。

長野 今、何してる?

宮国 練習です。

長野 どこでやるの?

宮国 公園です。

長野 えっ、本当に?

スマートでクールな印象が強かった男の覚悟は、周囲の胸を打った。長野は「聞いた時は驚いたけど、それだけ覚悟を持ってやってるんだなと感じた。りょうすけの現役にかける思いが伝わってきて感動したし、悔いのないように応援したいなと」と言った。

長野だけではない。巨人時代から師匠と慕った西武内海哲也、プロ1年目からの恩師で元巨人コーチの小谷正勝氏ら、多くの野球人が手を差し伸べ、背中を押してくれた。

1月は内海の自主トレに同行。2月は、巨人時代に内海の個人トレーナーだった保田貴史氏とともに、神奈川県内のグラウンド、屋内施設などを拠点に自主キャンプを継続した。2月1日には小谷氏が電撃訪問。同氏が一昨年9月にがんの手術を行ってから初指導だった。

巨人の戦力外通告から約4カ月。DeNAとの育成契約でNPB復帰までたどり着いた。「戦力外になって、あらためて感じたのは周囲の方の支えの大きさです。本当に多くの方々がサポートしてくれましたし、応援してくれた。僕は本当に幸せな人間だなと思います。はい上がっていくだけですから」。

自主キャンプ中の合言葉は「意志あるところに道は開ける」。糸満高以来となる縦じまのユニホームに袖を通し、新たな道を切り開いていく。【久保賢吾】