元阪神監督で日刊スポーツ評論家の真弓明信氏(67)が、好評企画の「解体新書」でドラフト1位佐藤輝明内野手(22=近大)の打撃フォームを解析した。14日の巨人戦で12球団単独トップのオープン戦4号を放つなど、新人離れした長打力を連日披露。怪物スラッガーの秘密を読み解いた。【取材・構成=田口真一郎】

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すごくいいんじゃないか、というのが、打撃フォームを見ての感想だ。<4>から<5>にかけて、右の腰が動き始めている。ここで打つ準備はできているが、まだ右肩は開いていない。このねじれが、パワーを生む。<6>の下半身だけに注目すると、ほとんど打ったように見えるが、まだバットは出てきていない。この状態であれば、ボールを見極めてハーフスイングで止められるし、速い球や変化球でタイミングを外されても対応できる。プロに入ったばかりでそれほど速い球を見ていないかもしれないが、実際に速球が来てもあまり慌てないだろう。この形は維持してほしい。

構えの段階でグリップを高く上げるのが特徴的だが、バットは低いところから高く上がっていくのは良くない。ボールに対し、バットが下から出ると、上には上がらない。上からつかまえにいくと、ボールは上がっていく。佐藤輝はライナー、フライを打つスイングになっている。頭の位置も次第に低くなっていって、フォローの段階でやっと上がっている。これもいいポイントだ。注意点は打席で余裕が出てくると、ミートする前に頭が上がったり、ヘッドを上に上げると、ボールが上がらなくなる。

近大時代の昨秋にフォーム解析した時は、右の腰を引いて回転するという右投げ左打ちが陥りやすい点を指摘したが、今は右腰でリードして右肩が我慢できていることで、後は左の腰をボールにぶつけていく状態になっている。これが上体が我慢できず、腰の回転とバットが一緒に出ていくとマイナスになってしまう。

左足に重心が傾きすぎだという声もがあるが、軸足である左足に体重が乗って、左足をうまく使えるから問題はない。逆に右利きだから、右に頼ろうとすると、右に早く体重を移してしまう。そうなると、体が突っ込む形になる。今の感じでいい。

今後は今の形を壊さないようにすることが大事だ。今まで見たことのない160キロ近いボールがきた時に、打てなくてもいい。ファウルできれば、次は抜けた半速球が来るかもしれない。160キロの球をきっちりと打てるという人は少ないのだから。フォームを乱すことがなければ、1シーズンもつと思う。周りも期待しているが、自分が一番期待しているところもある。プロの世界では打てないと慌ててフォームをいじることがある。そうではなくて、こういう分解写真やスローモーションのビデオを見て、いいところをしっかり認識して、状態が悪くなった時に、今の手本のような形に戻すべきだろう。

飛ばすことに関しては、今の球界でもかなり上、一番といっても言い過ぎではない。数多く打席を見たいよね。2ケタ本塁打が期待できるといっても、10本程度では寂しい話。20本超えないとダメでしょうね。ゆっくりと6、7番で打たせようという考えがあるかもしれないが、彼のような選手は、2番、3番において、考える野球を身につけさせたほういい。走攻守を期待しなければならない選手。早い時期から、考えて野球ができるポジションを与えるほうがいい。

○…真弓氏は昨年10月23日付の紙面でも、近大時代の佐藤輝の打撃フォームを分析していた。当時の連続写真から、右の腰を引いて回転する右投げ左打ちにありがちな悪癖を指摘。左投手の外角に逃げる球に対応できるかを鍵に挙げていた。それでも右足が着地した際に、左足に体重を残して「割れ」ができたフォームがパワーを生むと評価。「プロで振り込んで、打撃フォームを作れば、なんぼでも打てる」と長打力に期待していた。

近大時代の佐藤輝分析はこちら―>

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