阪神元監督で日刊スポーツ評論家の真弓明信氏(67)が、阪神や巨人、オリックスなどがドラフト1位候補に挙げる近大・佐藤輝明内野手(4年=仁川学院)の打撃フォームを分析した。

26日のドラフト会議で、複数球団による1位指名が予想されるスラッガー。その特長や課題を好評企画の「解体新書」でプロの視点からチェックした。【取材・構成=田口真一郎】

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まず打撃フォームを見た時の第一印象は、長打力があるな、という体の使い方をしている。体全体を使って大きな打球を飛ばすタイプなのだろう。そんな風に映った。

始動から見てみよう。構えは、リラックスして自然体で立っている。写真<1>、<2>、<3>と、軸足である左足にしっかりと体重が乗って、ボールを待てているのがいい。<3>のように右足が地面に着いても、左足に体重が残っている。このような形を「割れている」と表現するのだが、この割れがあれば、力強いスイングで打球をとらえることができる。右足が着地した途端に体重が移ってしまうようだと、変化球に対応ができない。<3>までは、すごくいい形だ。

ただ<4>、<5>、<6>とインパクトに向かうまでの腰の使い方に課題がある。佐藤君は右投げ左打ちだよね。というのも、右の腰を引いて、腰を回転させている。この動きでは、腰が開き、バットを引いて出すような形になり、ワンテンポ遅くなる。バットが出にくくなってしまう。どうしても利き腕、利き足のほうが勝ってしまうので、右投げ左打ちの打者によくみられる傾向だ。腰が開けば、外角に逃げるボールは届かなくなる。どちらかといえば、内側のボールはうまく打てるが、左投手の外に逃げる球に苦手があるのではないだろうか。

短、中距離の打者ならば、上体だけである程度カバーできるので、右で腰を回すのが邪魔にならないかもしれない。しかし本塁打がほしい打者はそれが邪魔になる。左バッターは右の膝、腰を壁にしないと遠くに飛んでいかないからね。右側を壁にして、左が追い越していくバッティングをすると遠くに飛ばせるようになる。特にバッティングは一瞬の体の動きだから、意識しないと壁ができない。まだ大学生ではあるが、プロの速い球は打てない。

そうはいっても、素材はやはりいい。フォロースルーを見れば分かるが、上体はものすごく力がある。リーチも長いので、多少外側でもバットは届く。今は体が開いても、上体の力でバットが振れているのではないか。どんなにフォームが良くても本塁打を打てない人がいる。佐藤君は大学でそれだけ本塁打を打っているのだから、足と腰を使えば、もっと簡単に遠くに飛ぶ。プロの世界でしっかりと振り込んで、打撃フォームを作っていけば、いくらでも打てるだろう。スラッガーとしての素質は十分だ。

◆佐藤輝明(さとう・てるあき)1999年(平11)3月13日、兵庫・西宮市生まれ。甲東小1年から甲東ブルーサンダースで軟式野球を始める。6年ではタイガースジュニアに選出されたが、右肘を痛めて活躍できなかった。甲陵中では学校の軟式野球部に所属。仁川学院では高校20本塁打。近大では1年春からレギュラー。2年春から3季連続ベストナインに選出(2年春は外野手、2年秋と3年春は三塁手)。リーグ戦通算14本塁打。ベンチプレス130キロ、左右の握力75キロ。父博信さん(53)は日体大の柔道部(86キロ級)で、現在は関学大の准教授。187センチ、94キロ。右投げ左打ち。