追い込まれたときほど、真価を発揮する。身も心も一新した西武平井克典投手(29)が、まっさらなマウンドで表現した。

初の開幕ローテーション入りで、初回から得点圏で踏ん張った。2死一、二塁でジョーンズを147キロ直球で中飛。3回にも1死一、二塁からジョーンズと頓宮を、ともに直球で打ち取った。「緊張していましたけど、いつも通り投げることを心がけてマウンドに上がりました」。被安打6も、得点圏は7打数無安打に抑え、6回無失点で切り抜けた。

今年で30歳。遅咲きの右腕が、セットアッパーから本格的に先発転向して臨んだマウンドだった。最速147キロ。コーナーを突くスライダーが左右の打者に効いた。球数97球、6イニングはプロ入り最多で最長。未知の領域に突入しても、集中力は落ちない。「今日はめちゃめちゃ疲れています」。お立ち台で、ようやく本音が口を突いた。

19年にパ・リーグ最多記録を更新する81登板。稲尾和久の記録を抜き「神様、仏様、平井様」と呼ばれた。だが昨季は中継ぎで成績を残せず、谷間の先発でも1勝3敗と振るわなかった。秋季練習で本格的に先発転向を志願。春季キャンプは投げ込みで投げる体力を培い、オープン戦最後まで“テスト”が続いたが「もう1度1億円プレーヤーになる」を合言葉に自身を奮い立たせた。

開幕投手の高橋が登板前夜に飲み干す“ビールルーティン”。もともと平井が社会人時代から取り入れた儀式だった。「試合前は絶対1本。それ以上は御利益がない」と清めた2人が、ともに開幕カード勝利投手となったのは、偶然ではない…かもしれない。平井は「次のゲームがすごい大事になってくる。まずは1週間しっかり準備して、次の登板にベストで臨めるように頑張ります」。再スタートの白星をかみしめ、次のローテに目を向けた。【栗田成芳】

▽西武辻監督(平井が開幕カード勝ち越しをもたらす投球に賛辞) アドレナリンも出過ぎて、いつもより真っすぐのスピードが速いし、スライダーも速いし。苦労したんだけど、よく踏ん張りましたよね。

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