ノムさん、見てくれていますか! 阪神が6年ぶりの開幕3連勝を飾った。先発ガンケルが6回無失点と好投。打線もマルテ&サンズのアベック弾が飛び出すなど投打がかみ合った。この日は両球団で監督を務め、昨年2月に84歳で亡くなった野村克也氏の追悼試合。猛虎の雄姿を天国に届けた教え子の矢野燿大監督(52)も、16年ぶりVへの決意を新たにした。まだ3試合だが勝率は10割! ノムさんもビックリの? 2年ぶり単独首位だ。

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背番号73の矢野監督が右手を挙げ、東都のファンの声援に応えた。6年ぶりとなる開幕3連勝。ビジターでは実に17年ぶりだ。ゲーム終了後も鳴り響くメガホンの音は、三塁ベンチから出てきた虎のナインに注がれていた。「目の前の試合を1試合、全力で取りに行くというのができた中の3連勝。自分たちのゲームができた」。指揮官は充実した表情でうなずいた。

オープン戦首位の勢いが止まらない。初回に絶好調の5番サンズが先制の適時二塁打を放つと、3回には3番マルテが1号ソロ。8回にもマルテが右前適時打、サンズが3号3ランと中軸がこの日も活躍した。開幕3試合で、チーム打率2割9分は12球団トップ。6本塁打もソフトバンクと並んでトップタイだ。この日は先発ガンケルも6回無失点と好投。危なげなくヤクルトを押し出した。

球場がいつもと違う空気に包まれた。この日は両球団で監督を務めた野村克也氏の追悼試合。両チームのナインが全員、同氏がヤクルト監督時代に9年、阪神監督時代も最後の01年につけた背番号73のユニホームを着用した。球場には半旗が掲げられ、試合前には同氏をしのぶ映像がビジョンで流れた。矢野監督も黙とうで静かに目を閉じ、心を新たにしての一戦だった。

矢野監督は現役時代、野村阪神1年目の99年に初めて規定打席に到達し、打率3割4厘を記録するなど大きく飛躍。「頭で考えてやる。能力だけでやるんじゃないというのは野村さんの考え」。考える野球は能力のある選手にも勝る。ノムラの教えが、指導者としての礎にもなっている。

開幕前日の25日、野村氏が沙知代夫人と眠る都内の墓をお参りした。「また頑張ってきますという報告もしてきた。野村さんの考えで、俺自身もやれたし、教えてもらったものを伝えていく」と改めて日本一を誓った。

粘って開幕戦を取り、2、3戦目は圧倒した。「全員でやれた野球は、うちの野球。開幕からそれができたのはチームとして自信にしていきたい」。今後は甲子園でも追悼試合が検討されている。天国のノムさんが目を丸くするようなシーズンへ。DNAを受け継ぐ矢野阪神が、最高のスタートを切った。【桝井聡】

◆野村克也(のむら・かつや)1935年(昭10)6月29日生まれ、京都府出身。峰山から54年南海(現ソフトバンク)に捕手としてテスト入団。65年に戦後初の3冠王。70年から8年間兼任監督。ロッテ、西武でもプレーし80年引退。通算3017試合、2901安打、657本塁打、1988打点はNPB2位。評論家を経てヤクルト、阪神、楽天で監督を務めた。20年2月11日、84歳で死去。

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