開幕5連敗を喫したロッテがトンネルを抜けた。プロ初登板初先発の本前郁也投手(23)が、プロ初勝利を手にした。背番号49の左腕は3月14日に支配下登録されたばかり。楽天に3被弾し5回4失点も、湿っていた味方打線が“歓迎会”とばかりに16得点と強力に援護した。新生活が始まる人も多い4月1日。ロッテもチーム全体でフレッシュマンの門出を盛り上げ、反転攻勢へ向かう。

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本前はお立ち台で「最高です」と笑った。「浮かれないように」と意識しながらも、ベンチでも幸せな表情で先輩に感謝し続けた。本塁打2発を浴びて逆転された直後の2回裏、味方打線が一挙6安打9得点で大逆転した。3回表への準備中、捕手田村が目の前にやって来て、真顔で「頑張れよ」とひと言。「意外とシンプルでちょっと笑っちゃいました」と回想した。

3回は主砲浅村をツーシームで併殺にし、白星への道筋を固めた。チームは5連敗中。「少しプレッシャーもあった」としながら「自分の投球だけ考えよう」と悩まず投げた。よく寝てよく食べて、デビューを迎えた。変化球は不安定だったものの、140キロ台中盤の直球を軸にプロ1軍の打者たちから淡々とアウトを重ねていった。

アクシデントを乗り越えた。北翔大4年の9月上旬、社会人チームとの練習試合で痛烈なライナーが左側頭部を直撃した。打球に押されるようにマウンドに倒れた。周囲から声をかけられ「大丈夫です…」と口を動かしたものの、自力で立ち上がることができず、救急車で運ばれた。

夢は譲れない。病床でプロ志望届を書いた。しかし再起できるのか-。多くの球団が本前から距離を置き始めたが、ロッテ榎康弘スカウト(48=現チーフスカウト)のスタンスは変わらなかった。下級生時から「試合終盤に球威が落ちずに投げられていた」と評価。チームに不足する先発左腕候補を熱心に推し続けた。

育成ドラフトを受けた日から「1日でも早く」と、この舞台を願った。開幕わずか12日前に支配下登録。石川が故障で一時離脱したことで開幕先発ローテの最後1枠に入り、チーム最初の白星をつかんだ。札幌から門出を祝いに来てくれた両親にウイニングボールを贈り、プロ野球選手として堂々と歩き出す。「チームも初勝利なので、本当に良かったと思います」。頼れる先輩たちの助けも受けながら成し遂げた、4月1日の初仕事。ロッテに頼もしい強心臓左腕が加わった。【金子真仁】

 

◆本前郁也(もとまえ・ふみや) 1997年(平9)10月2日、札幌市生まれ。札幌光星では甲子園出場なし。北翔大ではリーグ戦通算14勝を挙げ、2年春、3年春秋に防御率1位で最優秀投手。19年育成ドラフト1位でロッテ入団。1年目は2軍で11試合に投げて2勝0敗、防御率2・56。2年目の今年、3月15日に支配下登録。今季推定年俸420万円。175センチ、76キロ。左投げ左打ち。

ロッテ井口監督(本前について)「なかなか変化球が決まらない中でもしっかり試合は作ってくれた。もっといい投球を見せる投手なので、次回もっと楽しみにしています」

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