仙台6大学野球が、5月1日に開幕する。東北福祉大のエース右腕、椋木蓮(4年=高川学園)は、6季連続リーグ優勝と全日本大学選手権日本一を目標に掲げる。最速153キロ直球とキレのある変化球が持ち味。昨秋リーグ戦ではMVPを受賞し、東北地区大学野球王座決定戦で最優秀投手賞にも輝いた。今秋ドラフト上位指名に向けても“圧投”すると力強く宣言した。

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大学ラストイヤーに、椋木の気持ちは高ぶっている。「緊張よりも、楽しみな気持ちの方が強い。自分が一番目立つような活躍ができればと思っている」と鼻息を荒くした。昨秋は中継ぎ陣の一角を担い、リーグ優勝に大きく貢献。今年は開幕戦から先発の柱でフル回転していく。「先発がチームの中心として試合をつくっていく。無駄球をなくして、四死球を出さずに、長いイニングをしっかり0点に抑えていきたい」と力を込めた。

けがの期間があったからこそ、力をつけた今の自分がいる。2年春に右肩関節唇と診断。痛み止めを服用しながら、しのいでいた。「投げたい気持ちが強くて、純粋に野球を楽しみたかった。(大塚)監督にも言わず、春季リーグは投げていた。大学選手権を前に、バレてしまうことになり『もう、やめとけ』と言われた。痛み止めを飲まずに投げたら、5メートルも投げることができなかった」と治療に専念するようになり、翌年の2月に完治した。投げられない期間は、投手陣の冬場の定番スポット、亀岡八幡宮(宮城)で365段の階段ダッシュを繰り返すなど、下半身を徹底的に鍛え上げた。投球動作も見直し、右腕と股関節の使い方を意識的に変えた。さらに、入学当初から1日5食の食事トレーニングを続けており「体重が増えない体質だったんですけど、投げないことによって、体重が増えるようになった」。67キロだったが、80キロと体に厚みが増した。昨秋リーグ戦で公式戦復帰登板を果たし、第4節の東北学院大戦で自己最速の153キロをマーク。計5試合で8回無失点、12三振を奪い、リーグMVPを受賞するなど、完全復活を遂げた。

1つ上の先輩超えを目指す。東北福祉大出身で昨秋のドラフト2位指名のヤクルト山野太一投手(22)とは、高川学園リトルシニア(山口)時代から一緒のチームでプレー。椋木は「(山野の)練習に対するストイックさは、すごかった。自分も見習うところです」と背中を追いかけ続けた。「好きな先輩の1人で、友達みたいな感じ(笑い)。山野さんを超えて、プロに行きたいと思っているので、ドラフト1位指名を目指す」と、目には力が宿っていた。

東北福祉大の6学年先輩で、日本人初のマスターズ制覇を果たした松山英樹(29)の姿にも刺激をもらった。「練習終わりに、ネットニュースで知った。松山さん、すごいですよね」。同校ゴルフ部のウエートルームが野球部グラウンドと隣接しており“世界の松山”を生で見たこともある。「あいさつ程度ですけど」。

自身は高3の時にゴルフを始めた。大学2年時から本格的にクラブセットを集めて、ラウンドするようになった。最初のスコアは200超えも、今ではベストスコア102の腕前だ。「最近はコロナで外出禁止なので、全然行けていないんですけど、良い気分転換になる。ゴルフのスイングは、野球に必要な体の動きにキレも与えてくれる。けがで投げられない期間もゴルフはできたので、その成果が(最速)153キロにつながったかもしれない」と、ゴルフは野球に通じるものがあると考えている。

今春リーグ戦は当初は17日開幕予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2度の延期を余儀なくされた。「モチベーションの維持が、正直難しい。でも、しっかり開幕戦に合わせていければ」と第1節の東北学院大戦での先発登板に、気持ちを切らさずに準備を進めていく。

目標はプロ野球選手。だが、まずはチームを6季連続リーグ優勝、3年ぶりの大学選手権Vへと導く。1年時には同選手権で2試合に登板し、日本一に貢献した。「結果がすべてだと思う。最終学年で全国優勝がしたい」と闘争心を燃やした。

ここまでリーグ通算8勝負けなし。防御率は0・36と驚異的な成績を残している。「勝利数であったり、防御率など、全数字には、しっかりこだわっていきたい」とさらなる飛躍を目指す。好きな言葉は「常笑」。大学最後のシーズンを迎える春季リーグを皮切りに、4年間の集大成をぶつけて笑顔の花を咲かせる。【佐藤究】

◆椋木蓮(むくのき・れん)2000年(平12)1月22日生まれ、山口・山陽小野田市出身。小学1年から野球を始め、中学時代は高川学園リトルシニアに所属。高川学園では高2夏に甲子園出場。東北福祉大では1年春からベンチ入り。178センチ、81キロ。右投げ右打ち。家族は両親、兄、妹。