雨風に耐え、節目を迎えた。楽天涌井秀章投手(34)が、史上47人目の通算2500投球回を達成した。古巣ロッテ相手に慣れ親しんだ敵地ZOZOマリンの強風雨をしのぎ、6回4失点。自身3戦ぶりの白星となるハーラートップタイの5勝目を挙げ、通算150勝にも王手をかけた。勝手知る石井GM兼監督も舌を巻く野球への姿勢。プロ17年目の今季も、地道な努力を積み重ねている。

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ポーカーフェースをゆがめた。5回終了後。風速10メートルを超える強風と雨が降りしきる中、涌井が記念ボードを掲げた。史上47人目の2500投球回。「名球会に入るわけでもないし、長い間やってればたどり着く数字。正直、自分の中ですごいなという数字ではないかな」と受け止めながらも、スタンドからの拍手を一身に浴びた。

経験で粘った。ZOZOマリンは、ロッテに在籍した19年まで6年間本拠地としていた。「集中力を切らさないことと、風を嫌がらないこと。それがマリンで投げる攻略法」と慣れ親しんだ敵地で悪条件下のイメージを描いた。ストライクを先行させ、緩いカーブも有効活用。6点のリードをもらった6回、「最後はストライクを集めすぎたし、カーブを使いすぎた」とレアードに3ランを浴びるなど4失点を悔やんだが、先制点を与えず、味方の援護を引き出した。

経験は努力が支える。西武でともにプレーし、楽天への道を作った石井GM兼監督は「彼すごく練習するし走るしタフ。情報がいっぱい拾える中で、そういうものも大事にしつつ自分を持って流されない」と評する。指揮官は日米通算2717回1/3を投げ、40歳で引退。「もうちょっと努力すればすごい記録が出せたと思うけど、僕は30歳で努力をやめた。でも彼は努力をやめない。ゴールが見える最後のストレートに入ってると思うけど、まだ成長している」と今年で35歳の右腕に厚い信頼を置く。

もう1つの節目も見えてきた。涌井はこの日の白星で通算149勝。史上49人目の150勝へ王手をかけたが「周りが勝手に言っているだけ。何勝したかとかは引退した時じゃないと価値は出てこない。選手としては、積み重ねてきたものなので、別にそんなにそこで終わりでもないという感じ」と受け止める。マウンドに立ち続ける以上、ゴールは作らない。次回登板へ、すぐに目を向けた。【桑原幹久】