阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)が、巨人戦で初本塁打を放ち、「セ界制覇」を果たした。6回に戸郷から、右中間席へ3試合ぶりの17号ソロ。エンゼルス大谷との今季6度目の「アベック弾」にもなった。チームの連勝は7でストップも、これが規格外ルーキーの意地。チームも「セ界制覇」の実現へ、交流戦明け最初のカード勝ち越しを目指す。

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軽やかに振り切った。6回2死。佐藤輝がフルカウントから、戸郷の6球目にバットを出した。フォロースルーを右手1本で描く“軽打”で132メートル飛ばし、右中間席へ17号ソロ。右翼席では着弾を待ちわびるように、青や紫の「佐藤輝明タオル」が揺れた。「負けていたんで、最低でも塁に出て強い当たりを…」とつなぎの意識で3試合ぶりの1発につなげた。

初対戦の戸郷に初回は1死一、三塁で3球三振。4回の第2打席は二ゴロ。いずれもスライダーにやられ「変化球で打ち取られていたんで、頭に入れながら」。第3打席では、この日4球目のスライダーが唯一高めに浮いてきた。怪物ルーキーは見逃さなかった。

セ・リーグでは巨人戦だけノーアーチだったが、11試合目で飛び出した。阪神新人の「セ全球団制覇弾」は、現行の6球団となった53年以降で5人目。田淵、岡田らレジェンドも通過してきた域に62試合目でたどり着いた。「巨人は倒さないといけない相手」と常々口にするルーキーは「勝たないと意味ない。次は勝ちにつながるような一打を打ちたい」と冷静に言った。

海の向こうのスラッガーともシンクロした。エンゼルス大谷がこの日のタイガース戦で2発。時差の関係で2人が「同日」に本塁打を放つのは今季6度目だ。休日には両リーグトップタイの22本塁打を放つタティス・ジュニア(パドレス)の打撃動画を“癒やし”にする。メジャー好きな22歳が、またも大谷との「アベック弾」を実現させた。

5番に入って以降、打率3割1分3厘と好調なルーキーを「状態はいい方」と矢野監督も認める。「その中でどういう打撃をしていくかが課題。もっともっとレベルが上がっていってほしい打者」と注文も忘れなかった。

チームは7連勝でストップしたが、佐藤輝はあらためて、一振りで空気を変えられることを証明した。「しっかり勝ち越しで終われるように頑張ってやっていきたい」。短い言葉に力を込め、3戦目を取りにいく。【中野椋】

▼佐藤輝が17号本塁打を放ち、左打ちの新人としてはプロ野球単独3位となった。また、阪神の新人としては2位の80年岡田18本塁打にあと1とした。

▼これでセ5球団から本塁打。53年にセ・リーグが6球団となって以降の阪神新人では、69年田淵、80年岡田、14年梅野、16年高山についで5人目。なおリーグが8球団だった50年には、渡辺博之が6球団から本塁打した例がある。

▼ボールカウント3-2からの本塁打は初。17本塁打のうち、2ストライク後の本塁打は9本にのぼる。打率こそ1割8分2厘と低いが、追い込まれても豪快に振っていく姿勢が表れている。