ヤクルトが、粘り勝ちで今季初めて首位に立った。15年のリーグ優勝を経験する小川泰弘投手(31)が、7回を3安打1失点の好投。ロースコアの展開に持ち込み、土壇場9回の中村悠平捕手(31)の勝ち越し打につなげた。チームは昨年7月13日以来、後半戦では15年以来の首位。小川を中心とした先発陣の力投が、チームの快進撃を支えている。

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小川はいつも通り、冷静に投げ込んだ。2回に二塁打2本を浴びて先制点を与えたが、引きずらずに後続を断った。7回1死一、三塁でも顔色を変えず。先制打を浴びた伊藤光を、外角高めの直球で併殺打に仕留めた。最少失点で先発の役割を全う。「調子自体は良くなかったが、何とか粘りながら投げることができた」と淡々と振り返った。

小川のような先発陣の安定感が快進撃を支えている。先発防御率は19年が5・05、20年が4・83。ともにリーグワーストで、チームは2年連続最下位に沈んだ。それが今季は3・75と大幅に改善。その要因の1つに徹底したローテ管理がある。7勝の奥川は、14登板のうち中9日が1度。それ以外は10日以上の間隔を空けてきた。また他の投手も、登板翌日の抹消が頻繁にある。小川は5月2日DeNA戦で2回KO。それまでの6戦で防御率5・46と不調に陥った。翌日に抹消され、ミニキャンプを敢行。走り込みを増やした。そして同15日中日戦での復帰登板は99球で完封勝利。与えられた期間と復帰メド日から逆算し、しっかり立て直した。

今季のヤクルトで、中5日以内での先発起用はない。首脳陣は各投手の状態を注視し、再調整や休養を交えながら、複雑な先発ローテを組み立てる。間隔が空いても、次の登板日をあらかじめ把握できていれば、選手も調整スケジュールが立てやすい。照準を明確にしたローテ管理が、投手陣の踏ん張りの土台。先発が試合を作り、この日のような1勝を重ねてきた。

高津監督は「(今年は打線が)つながり得点を取るのは明らか。よくそちらが注目されるが、投手陣がゲームを壊さない。クローザーまでつないでいく形がしっかりできているのが、去年にはなかったこと。先発が5、6回を少ない失点でいけるというのは今年成長したところ」と評した。

絶対に負けられない試合が続くからこそ、入念な準備が必要となる。シーズン終盤に首位に立ち、ゴールテープを切った15年の再現へ-。準備万全な投手陣から流れを引き寄せ、シーズンをトップで走り抜ける。【湯本勝大】

 

▼ヤクルトが5連勝で昨年7月13日以来の首位に立った。ヤクルトはこの日が113試合目。パ・リーグでは今季のロッテが102試合目、19年には西武が130試合目で初めて首位に立っているが、セ・リーグで100試合以上消化してシーズン初首位は94年9月28日中日の125試合目、08年9月21日巨人の131試合目に次ぎ3度目で、ヤクルトは初めて。94年中日は最終戦で巨人に敗れてV逸、08年巨人は残り1試合で優勝を決めたが、今年のヤクルトはどうなるか。

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