ドラフト会議へ向けた取材を進める中で、スカウトからよく耳にするのは「今年は1位候補が12人そろわない」ということだ。早大・早川(現楽天)、近大・佐藤輝(現阪神)と投打に目玉がおり、実際に4球団ずつ1位指名が重なった昨年と異なり、今年は突出した候補がいない、というのが一般的な見方だ。

早々と確定させるだけの選手がいないということで「事前に1位指名を公言する球団はないのでは」とみるスカウトもいる。そのため、ふたを開けてみたら1人の選手に指名が集中した、といったことも起こり得る。外れ、外れ外れ1位指名といった事態は各球団とも避けたい。直前まで、他球団の補強ポイントや動向の分析に追われるだろう。

突出した候補はいなくても、有望な選手は少なくない。高校生はノースアジア大明桜(秋田)・風間球打、市和歌山・小園健太、高知・森木大智の3投手。いずれも最速150キロ超のスケール感を誇るが、変化球や投球術を含めた現時点の完成度なら小園か。ただ、それぞれ魅力があり、球団の好みが分かれるだろう。

大学生は左腕に逸材がそろう。いずれも最速150キロ以上の筑波大・佐藤隼輔(仙台)、関学大・黒原拓未(智弁和歌山)、西日本工大・隅田知一郎(波佐見)の3投手がまず挙がる。右腕は東北福祉大・椋木蓮投手(高川学園)。野手は右の大砲、慶大・正木智也外野手(慶応)。関大・野口智哉内野手(鳴門渦潮)は堅守で高評価。捕手は強肩の中大・古賀悠斗(福岡大大濠)が人気だ。

社会人は右の豪腕、三菱自動車倉敷オーシャンズ・広畑敦也投手(23=帝京大)が早くから注目されてきたが、ここにきて、最速153キロ左腕のJR東日本・山田龍聖投手(21=高岡商)の評価が上がっている。

新型コロナウイルスは今年もスカウト活動に影響を与えている。中止となった大学・社会人の夏季オープン戦は少なくなかった。いまだ開幕できていない大学リーグもある。有力選手がそろう法大は部内で集団感染が起きたため、リーグ戦初戦がドラフトの2日前だ。さらに、今年はドラフト会議が例年より2週間ほど早い。「大学・社会人を見切れていない」と嘆くスカウトもいる。戦力を見定める機会が限られるだけに、より一層、眼力が問われそうだ。【アマチュア野球担当=古川真弥】