心の中の火は消えていない。阪神板山祐太郎外野手(27)が、2軍練習試合オリックス戦(オセアンBS)に「3番三塁」で先発し、5打数2安打1打点で存在感を示した。

4回には下手投げの中川颯から右前適時打を放ち「ああいうアンダースローの投手も1軍にいるだろうから。普通に打ったらフライになるので、低い打球を打とうと思って」と常に1軍基準を頭に入れ、結果を残し続けている。

「監督、よろしくお願いします!」

試合前には平田2軍監督にお願いし、マンツーマンでティー打撃とロングティーに励んだ。10月でも気温30度近くあった大阪・舞洲で、大粒の汗を額から垂らして振り込んだ。「たまたま監督の手が空いてたから」と笑うと、「ロングティーってしっかりした形で捉えないと、打球がスライスしたりフックしたり。それが分かりやすい練習なので、できる時は取り入れたい」と説明。全身を使って打球を飛ばし、ゲームではその力を1点に集中させた。

今季は開幕1軍入りも、5月に出場選手登録を抹消された。2軍暮らしが続く中、成長意欲は衰えない。8月9日のこと。エキシビションマッチ楽天戦が雨天中止となり、楽天生命パークの室内練習場で1学年下の近本に聞いた。

「なんでそうやってるの?」

スローボールに対し、バットを短く持って打ち返す近本の打撃を見て、思わず気になった。心に残ったのは「バットの軌道」の話だった。

「バットが短い分、体からバットが離れるとヘッドが利かず、強い打球がいかない。体の近くにバットを通すという意味でやっているとチカが言っていて。そういうのを聞いて、やってみたりはしました」

成長のため、質問相手が後輩だろうが関係ない。近本直伝の「インサイドアウト」の軌道を意識し、打撃を磨いている。

「まだ1軍の試合が残っているし、チャンスがあればというのは常に思っている」

この日、グラウンド横のレジャー施設では、家族連れがバーベキューを楽しんでいた。そんな秋の1日でも、板山の手にはバットだけ。見据えるのも1軍切符だけだ。【中野椋】