巨人が下克上日本一への第1関門をクリアした。「2021 JERA クライマックスシリーズ セ」ファーストステージ第2戦の阪神戦に逆転勝ち。2連勝で10日からのCSファイナルステージ進出を決めた。

打撃2冠王の4番岡本和が欠場の中、原辰徳監督(63)の経験則による采配で選手が適材適所で躍動した。短期決戦を勝ち抜く「原イズム」に潜入した。

   ◇   ◇   ◇

原監督の眉間のしわが柔らかな曲線に戻った。2点リードの9回2死一、二塁。ビエイラがロハスを空振り三振に仕留めて雄たけびを上げると、巨人ナインが歓喜の列を作った。原監督はハイタッチを終えると、足を止めた。スタンドに一礼した矢野監督に声を掛けた。激しい伝統の一戦を戦った敵将と握手し、健闘をたたえ合った。「苦しい展開だったが早い回で逆転できたのは大きかった。本当にギリギリの場面が多くてね」と熱戦を振り返った。

短期決戦の酸いも甘いも知る。監督として巨人でリーグ優勝9回、日本一3回。09年には日本代表監督としてWBCを制した。勝ち進むために必要なものは何かは、身をもって知る。

原監督 一番大事なのは短期決戦の中での勢い、リズムに乗ること。勝利が勢い、結束、次へのエネルギーを生む。大事にいく気持ちはとても重要だけど、どこか大胆に自分を信じ、チームを信じ、というところは必要になってくるね。

エース菅野の好投と野手が一丸となって難敵高橋を攻略した初戦の余韻には浸らなかった。加速度をつけるべく先発野手を3人入れ替え、最多勝右腕の青柳攻略に左打ち野手を6人そろえた。選手起用や交代に、不変のスタンスがある。

原監督 思い切ってやるということ。捨て駒はいないということですよ。1人1人、役割を持っている。

3回には無死一、二塁で代打に八百板を指名。練習から好調を感じ取っていただけに「賭けた」と強攻を指示し、右前打で逆転劇を呼び込んだ。8回無死一塁では4番丸にセーフティーバントのサインでダメ押し点をお膳立てした。

継投策でも救援陣を信じて妥協なく送り込んだ。先発高橋を2回途中で代え、CS最多タイの8人継投で逃げ切った。「守ることがしっかりできたということ」。シーズン終盤の大失速で失いつつあった「1Team」からくる自信と勢いを、呼び戻した。

3日後には、リーグ王者ヤクルトとのCSファイナルに挑む。「まだ終わったばかりなのでね、少し選手たちも私自身もリラックスして」と前置きし、続けた。「挑戦権を得たという部分に関しては、しっかり戦っていきたい」。巨人史上初の3位からの日本シリーズ進出へ-。最終決戦でも選手を、自分を信じ、タクトを振る。【浜本卓也】

▽巨人元木ヘッドコーチ(3回の八百板の強攻策について) 監督指示。監督も『練習いいよな』って言っていたんでチャンスもあるんだろうなと思っていたんだけど、あそこで。おれもバントかなと思ったんだけど打たせたから。いや、すげーって思った。

▽巨人松原(3回の左前適時打を含む2安打の活躍) 積極的にいこうとは思っていた。でもやみくもではなく、狙い球を絞っていこうと。

▽巨人鍵谷(6回2死満塁のピンチで登板し、阪神マルテを三ゴロに) なんとしてでも0点で抑えるだけを考えて、思いきって投げました。ほっとしています。

◆CSファーストステージ シーズン2位と3位が3試合制で対戦し、勝利数の多い球団がファイナルステージに進出。引き分けを除いた勝利数が同じ場合は2位球団が勝者。延長戦は行わず、同点の場合は9回打ち切りで引き分け。9回表終了時や9回裏の攻撃中に後攻のステージ勝ち上がりが確定した場合、その時点で終了する。