スアちゃん残って! 阪神矢野燿大監督(52)が10日、メジャー流出危機にある守護神ロベルト・スアレス投手(30)に直接、残留要請したと明かした。2年連続のセーブ王は同日に離日。2年契約の2年目となる来季の選択権はスアレス側が持ち、シーズン中から複数のメジャー球団が視察、調査を続けてきた。契約交渉の行方が注目される中、昨年に続いて指揮官が動いた。

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矢野監督は最後に直接、スアレスへ熱い思いを伝えていた。「スアちゃん頼むぞ! と言うことだけは。お願いと言うと何だけど…。オレらの気持ちはこうだからなというのは伝えた」。CSファーストステージで3位巨人に連敗して敗退し、秋季練習の始まったこの日に右腕は日本を去った。

「本当に(試合の)最後にスアちゃんがいてくれるのは、すごい安心感。優勝できなかったけど、チームに大きく貢献してくれた投手。いてもらわないと困る」。今季は不動の守護神として62試合に登板し、防御率1・16とフル回転。42セーブは15年呉昇桓の41セーブを超えて球団助っ人最多だった。2年連続セーブ王も14、15年の呉昇桓に続き球団2人目の快挙だ。

昨オフもメジャー複数球団から熱視線を浴び、1度は保留者名簿から外れて流出の危機だった。この時も矢野監督が本人にラブコールを送ったこともあって、スアレスはタイガース愛を貫いて残留。球団は年俸8000万円から2億6300万円と大幅アップの2年契約で迎えた。2年目の契約選択権はスアレス側が持っており、阪神との交渉が続いている。国内他球団への移籍は出来ない条項となっているもようだ。

今季は球団最速163キロで動くクセ球に140キロを超えるチェンジアップを駆使し、昨季の25セーブから大きく伸ばした。安定感が増した投球をシーズン中にメジャー複数球団が視察しており、昨年以上に守護神を求める球団が出てきそうだ。メジャー経験のないスアレスに対して、矢野監督は「個人の夢や決断は尊重しないとダメなんで。あとはスアちゃんが出す決断を受け入れるだけ」と同じ野球人として理解も示した。

普段は物静かでシャイだが、今季は優勝争いの最終盤で試合前に円陣で声だし役も務めてナインの気持ちをまとめるなど、欠かせない存在となっている。CS敗退後には「熱い声援をくれたファンのみなさんには本当に感謝の気持ちでいっぱい」と語った右腕が、変わらぬタイガース愛で来季もタテジマを着ることを祈るだけだ。【石橋隆雄】

◆ロベルト・スアレス 1991年3月1日生まれ、ベネズエラ・ボリバル州出身。セシリオアコスタ高を経て、15年メキシカンリーグでデビュー。16年ソフトバンクに入団して救援でフル回転したが、17年4月に右肘のトミー・ジョン手術を受けた。20年から阪神。今年10月3日にヤクルトに所属する兄アルバートとNPB初の兄弟同日セーブを記録。188センチ、95キロ。右投げ右打ち。

<阪神スアレスの昨オフ交渉経過>

◆11月12日 帰国の際に「残りたい気持ちはすごくある。しっかり(答えを)見つけ出したい」と語る。

◆同27日 11月末が提出期限の保留者名簿から外れることが判明。

◆同28日 矢野監督が帰国前に「来年(一緒に)やるぞ!」とラブコールを送ったと明かす。

◆12月2日 契約保留者名簿の提出期限までに合意に至らず自由契約選手に。

◆同14日 メジャーを含む複数球団が獲得へ興味を示したが、残留の方向に進んでいることが判明。

◆同24日、年俸は約8000万円から3倍以上となる約2億6300万円の2年契約で合意。