ヤクルト奥川恭伸投手が感情をむき出しに投げ抜いた。「大事な初戦を任せていただいて、すごく緊張があった」。高ぶる鼓動をボールに乗せるかのように、自然と力が入った。最速は152キロを計測。普段は140キロ前後のフォークも、この日は145キロまで達した。投げ合う相手は、パ・リーグでタイトルを独占した山本。「粘り負けないように頑張りたい」と語った意気込みを投球で表現した。

喜んだり、笑顔を見せることはあるが、普段はマウンド上ではあまり表情を変えない。どちらかと言えばクールな若者が、喜怒哀楽を隠さなかった。0-0で迎えた5回1死から若月に8球目を中前に運ばれると、左腕を振って悔しさをあらわにした。2死一、二塁では吉田正を中飛に打ち取って乗り切ると、ほえながらガッツポーズをとった。1点リードで迎えた7回1死では、モヤに右中間への同点ソロを浴びると、大きくうなだれた。8回無死一塁で村上が一時勝ち越しの2ランを放つと、ベンチで両手を上げて喜びを爆発させた。感情を素直に出した1日だった。

7回を6安打1失点3奪三振。4回以外は安打を許したが、要所で踏ん張った。初めての日本シリーズの大舞台で、堂々の投球。自分の仕事をやり遂げた。「自分的にはいい内容とは言えないが、中村さんのリードであったり、野手の方の守備に助けてもらいながら、7回までは投げることができた」と周りに感謝。現状に満足せず、さらに先を見据えた。

今季はプロ初勝利を含む9勝。CSファイナルステージや、日本シリーズの初戦を任されるまでに急成長した。飛躍した1年の集大成として、パ・リーグを代表する好投手相手にも1歩も引かなかった。まだ高卒2年目の20歳。この経験を糧に、誰もが予想もつかない成長曲線を描いていく。【湯本勝大】

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