ロッテ佐々木朗希投手(20)の直球が驚異的な領域に入りつつある。西武相手に8回3安打1失点で、今季1勝目。レギュラーシーズンでは9度目のZOZOマリンでの先発で、うれしい本拠地初勝利を手にした。

投じた70球の直球は、平均球速159・5キロ。カーブなど変化球を交えた全99球でも154・4キロと類を見ない数値だ。プロ3年目、世界でも有数の球威で攻めながら、中6日のシーズンを戦っていく。

【ニッカン式スコア】3日のロッテ―西武戦詳細スコア

小雨でも佐々木朗希の表情は晴れていた。「今日は寒い中、応援ありがとうございました」。縁が結ばれたドラフト会議から899日、念願のマリン初勝利をつかんだ。「すごく力になるし、その中でいい投球をできるように」。プロ野球選手になって初めて、2万人以上の前で投げた。

プレーボール直後の160キロから、動画に収める人がいた。圧倒的な球速に、マスク内の「おぉ~」が場内に低く響く。3球目で163キロ、4球目は右打者岸の内角から入る144キロスライダーで見逃し三振に。「前回は変な力みで制球が良くなかったので、しっかり脱力して、制球重視で投げられたのが良かったです」。5回までは毎回の“マルチ奪三振”。8回で13個の三振を奪った。

回を追うごとにわずかに落ちる平均球速が、微増に転じたのが6回だ。「先頭を取れるように。そこがすごく大事になってくると思うので」。大船渡高時代、グラウンド整備後に流れが変わりがちな6回はむしろ、ややスピードを落とすことが多かった。今は制球重視でも球速は同じ-。8回にも160キロが2球。「しっかり脱力してペース配分できたところかなと思っています」と話した。

バットも何本かへし折った。ファウルも含め、打者に初めて引っ張り方向に打たれたのは61球目。「カウントによって甘くいっていいところは思い切っていけたし、しっかりコースに投げ切らないといけないところは投げ切れたので」。直球での空振りはプロ入り後最多の12球。73・7%というストライク率の中で圧倒した。大きくなっても柔軟なままの肉体が、ワールドクラスを生み出す。

中学生で股関節を痛め、ストレッチを大事にして練習に励んだ。夕方5時にザ・ビートルズの「イエスタデイ」が響く港町でじっくり育んだ。偶然にも、チャイムが鳴り終わる5時1分ごろ、お立ち台で出番が回ってきた。「しっかり1年間、ローテーションで投げ続けられるように頑張りたいと思います」。どんな投球をしても、試合が終わればもう昨日のこと。明日を見る。【金子真仁】

▼ロッテ佐々木朗がプロ入り後最多の13三振を奪い、初の2試合連続2桁奪三振。1試合13奪三振以上は、球団では09年9月3日の成瀬善久(対日本ハム=13個)以来13年ぶり。ロッテ投手がシーズン初登板から2試合連続2桁奪三振は、92年4月7日ダイエー戦、同23日近鉄戦で各10個を奪った牛島和彦以来30年ぶりになる。シーズン初登板からに限らず、ロッテの3試合連続2桁奪三振は95年9月の伊良部秀輝以来出ておらず、次回登板で球団27年ぶりの快記録なるか。