大勢投手(22)が跳びはねながらベンチを飛び出した。立岡のサヨナラアーチに大喜び。セーブではなく、プロ初勝利が舞い込んだ。ウオーターシャワーの輪に近づくも「1年目というのもありますし、自分が口を付けたやつなので、コロナ的にもよくないなと(笑い)」と手に持ったペットボトルはそっとポケットにしまった。

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3者凡退で、勢いをたぐり寄せた。同点の延長10回。プロ8戦目で初めて、セーブ機会ではないマウンドに上がった。2死からヤクルト山田に力勝負を挑んだ。5球連続の直球でカウント2-2とし、最後は内角156キロで空振り三振。「勢いを持たせてサヨナラにつなげたいと思っていた」とガッツポーズでほえた。

主戦場ではない場所での働きは、大勢に奥行きを生んだ。西脇工3年の最後の夏、兵庫大会5回戦で敗れた。チームを引退後、大学入学まで兵庫・多可町の実家近く、巻きずしの「マイスター工房八千代」でアルバイトをした。テレビでも紹介される有名店。節分には恵方巻き1万8000本もの注文が入り、大忙しだった。

毎週日曜日、貴重な男手として重い荷物を運んだり、掃除をしたりとフル稼働した。施設長の藤原たか子さんは「しゃきっとして、気持ちが良い子だった」。時給900円弱で午前8時から午後4時まで働いた。藤原さんとの縁は続く。成人式、ドラフト指名直後など節目では必ず店に立ち寄ってきた。

好きな食べ物を聞かれれば「マイスター工房の巻きずし。実家に帰省すると親が買ってきてくれる。いっぱい食べます」と青春時代の味は忘れない。ここまで球団新人最多タイの7セーブ。この日は「抑えなので勝利はあまりないかと…。その勝利をいただけたのでよかった」と劇的な結末をかみしめた。初勝利の味もまた、忘れられないものになった。【小早川宗一郎】

▽マイスター工房八千代の藤原施設長 大勢、初勝利おめでとう。本当にいい男です。ケガだけはしないように気を付けてね。

▽巨人原監督(プロ初勝利を挙げた大勢について) 万が一このイニング(延長10回)が0点だったらもう1イニングいってもらおうと、決めていた。