ロッテ佐々木朗希投手(20)がプロ野球28年ぶりの完全試合を達成した。

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28年前、巨人槙原寛己投手の完全試合を目の前で見た。7回ころから球場がざわつき始め、槙原投手が投げるたびに大歓声。後ろで守っている野手が、回を追うごとに緊張していくのが見て取れた。ノーヒットノーランと違い、エラーしたらそれこそ大記録に水を差す。27アウト目の一邪飛をとった落合博満選手のぎこちない足の運びを、今でも覚えている。

試合終了直後、一緒に取材していた先輩から「今から横浜(現DeNA)の先乗りスコアラー(次の対戦に備えた偵察要員)のところに行け」と言われた。槙原投手の全投球を新聞に掲載するためだ。デジタル時代の今なら、1球ごとに速報され、わざわざ人に聞くこともない。しかし28年前は、1球1球をシートに記録しているスコアラーさんだけが頼りだった。

横浜の先乗りスコアラーは、のちに球団取締役になる笹川博史さんだった。宿泊しているホテルに押しかけ、内線電話で「スコアシートを全部見せてほしい」と依頼。「今からか?」と困惑されたが、「笹川さんだけが頼りなんです。締め切りまで時間がありません!」と頼み込んだ。

おかげで翌日の紙面に、槙原投手の全投球(102球)を細かく掲載することができた。歴史を記録し、後世に伝えていくのも、われわれメディアの仕事。完全試合に立ち会えたことは数少ない自慢の1つだ。【元巨人担当・沢田啓太郎】