ロッテ佐々木朗希投手(20)が24日のオリックス戦に先発する。現在、打者52人連続アウトを継続中。海外からも注目される登板だ。試合が行われる京セラドーム大阪は満員でも3万人台。多くの人がテレビ中継や配信で見守ることになる。

驚異的な投球や記録達成を“予感”させる術はあるのだろうか。

「実は、こんな話を聞いたんです」

証言するのはフリーアナウンサーの中尾考作氏(38)だ。岩手朝日テレビに在職時代、佐々木朗の大船渡高3年夏の岩手大会の実況を担当。エンゼルス大谷の花巻東3年夏の大会の実況を務めた経験もある。

岩手大会の多くの試合を生中継する同局で、中尾氏も長年、精力的に取材を重ねてきた。同大会の開会式では中継シフトに入っておらず、その時間を使い、大船渡高野球部の関係者に単独取材を行っていた。「そこでうかがった話なんですが…」と切り出した。

「ぼんやりした話なんですけど、朗希がうれしそうに投げてる時がたまにあるんです。その時は自信ある時なんだろうなと感じてます。その関係者の人から、そんな風に聞きました」

中尾氏の脳裏に残ったその言葉が、実況に直結したのは4回戦の盛岡四戦だった。延長12回、194球を投げ、公式戦最速の160キロを投げ、自身で決勝本塁打を放った。佐々木朗の能力やスター性を、高校時代に最も発揮した試合といえる。

メイン球場の岩手県営野球場での、その夏初めての試合だった。同局は異例となる5台のカメラを配置し、試合や佐々木朗の動向を追い掛けた。実況を担当した中尾氏は、イニング間のCM中も、頻繁に背番号1に視線を注いでいた。すると-。

「多くのカメラでイニング間も映して、どこかのタイミングで感じたんです。楽しそうにやってるなと。あれ、これもしかしたら、ひょっとするかもなと思ったのを、僕、覚えてるんです。CM中とかで笑ってるのも見えました」

何かを予感した中尾氏。もともと球速を伝えることに重きを置いていなかったが、同じマウンドで花巻東・大谷翔平投手が160キロを投げた日付を、実況メモの横に書き足した。そして間もなく、160キロが出た-。

そんなエピソードを前回4月17日の日本ハム戦(ZOZOマリン)の試合中にふと思い出した。試合中盤から佐々木朗の表情がいつもより、わずかに和らいでいるように見えた。8回で降板したものの、8回の最後の球が163キロ。「ひょっとして」が具現化しても、決しておかしくない流れだった。

完全試合を達成した10日オリックス戦からの2試合、球場の空気はすごかった。一方でテレビ中継やネット配信だからこそ、感じられるヒントもある。試合は今日24日、午後1時に始まる。【金子真仁】