久しぶりに仙台に来た。今回は今日10日から楽天と戦うロッテの取材だが、楽天担当として2010年秋から3年あまり住んだ町への思い入れは深い。新幹線の改札を出てエレベーターを降りると、懐かしさに襲われる。地下鉄の路線図を見ると「八木山動物公園」の文字。昔の記事の記憶がよみがえった。

「仙台に動物園はあるのか?」。

そう尋ねたのは、誰あろう、星野監督だった。もう9年前になる。13年6月の練習日。いつものように、Kスタ宮城の三塁側ベンチで担当記者たちとの雑談が始まった。キャッチボールをする投手陣を見ながら、ふいに口を開いた。地元紙の河北新報の記者が「あります」と答える。それを聞いてニヤリ。「ええやないか」。

なぜ動物園なのか? 続きがある。

「キクに虎とにらめっこさせろ!」

これだけだと、訳が分からない。どういうことかいうと…。

キクとは、菊池保則投手(当時23)のこと。開幕から波に乗れない原因を、星野監督はメンタルに見ていた。そこで、猛獣とにらめっこさせることで、精神力を付けさせようという狙い。“元ネタ”は、日本レスリング協会会長を務めた八田一朗氏。スパルタ指導で有名で、実際に選手たちに猛獣とにらめっこさせたという。

効果のほどはともかく、星野監督はノリノリだった。「今の選手は追い込まれてない。そういう練習をしないといけない。(にらめっこで)生肉を持たせるのもいいな」と続けた。

本気で話していたかというと…多分に、練習日の話題づくりをしてくれたのだと思う。そういう方だった。翌日の日刊スポーツには「星野監督 進言 菊池にらめっ虎(こ)」の見出しが躍った。もちろん、右腕に精神面の殻を破って欲しい願いからの発言でもあった。

なお、冒頭に書いた担当記者とのやりとりは、私の想像入り。記事を見返すと、署名が一緒に楽天を取材していた斎藤庸裕記者だった。恐らく私は休みだったのだろう。ただ、そんなやりとりがあったと、すぐに想像できた。星野監督の心遣いに感謝しながら、話を展開するのが常だった。

さて、ナイターまで時間がある。せっかくなので、動物園へ行ってみた。今回が初めて。住んでいたときは東西線の開通前だった。仙台から西へ6駅目。あっという間に着いた。

スマトラトラのダマイ(♀、7歳)と対面。にらめっこしようとしたけど…なかなか視線を合わせてくれなかった。だが、ほえた(あくび?)時に見えたキバに、ぞくり。にらめっこしても勝てるわけがない。

ところで。9年前の記事、星野監督はこう締めていた。

「俺も(7月中旬の)球宴休みで行こうかな」

果たして、本当に足を運んだのか、聞かずじまいになってしまった。確実に言えるのは、菊池投手は今も現役を続けており、広島で頑張っているということ。そして、楽天は日本一になったその年以来となる球団記録の7連勝をさらに伸ばし、首位を独走しているということだ。

天国の星野さんは、今の菊池投手と楽天をどう見ているのだろう。そんなことを思いながら、再び地下鉄に乗り、楽天生命パークへ向かった。【古川真弥】