頼れるサウスポーが帰ってきた。楽天辛島航投手(31)が、20年10月29日西武戦以来、573日ぶりの白星を挙げた。

左肘クリーニング手術から復帰し、同11月5日オリックス戦で先発して以来のマウンド。スライダーを効果的に使い、打たせて取った。5回3安打1失点で通算50勝目。復活した男がチームの連敗を4で止めた。

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辛島にとってプロ初の甲子園のマウンド。2回先頭の大山に左翼へ先制弾を浴びた。「先制点を浴びてなんの余裕もなかったです」と振り返るが、冷静さは失わなかった。独特の浜風で、投球時に体が流れた。スライダーを効果的に使っていったが時折、高めに浮いた。手首が寝ないようにリリースし、修正。要所要所で低めを突いた。余裕が出てきたのは「6回ぐらいですね」と、マウンドを降りてから。無我夢中で阪神打線へ向かっていった。

昨季は1軍登板なし。待望のマウンドも特別な感情は湧かなかった。「プロなので、ダメだったらいなくなる世界。別に込み上げてくる思いはない。1軍にいないといなくなっちゃうから、必死に頑張ろうってそれだけ」と淡々。普段は冷静でひょうひょうとした性格だが、それでも今季は闘志を内で燃やしていた。今年のキャンプ前、小山1軍投手コーチへ「今年はどこでもいいので、中継ぎでもいいので1軍にいさせてください」と志願した。高卒1年目で入団してきた時から知る長い付き合い。小山コーチは「どこでもやりますという気持ちは買いたいですし、なんとしてでもチームの力になりたいというのは本当に感じた」と心を打たれた。

ファームでは5試合で防御率0・30と圧倒した。涌井が右指の骨折で離脱したことで、回ってきたチャンス。好投でチームの窮地を救った。2年ぶりの勝利も表情は変えず。「そんな甘くないと思うので気を引き締めてまた来週、挑みたいです」。ただ前を見据えた。【湯本勝大】

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