【虎番リポート】阪神佐藤輝明内野手(23)が、ロッテ佐々木朗希投手(20)とのプロ3度目の対決に臨む。27日のロッテ-阪神(ZOZO)で先発予定の右腕とは昨季交流戦で適時打、エキシビションマッチで本塁打を放つなど好相性。藤井康巡回打撃コーチの「4スタンス理論」をもとにした打撃指導で確実性も伴いつつあり、進化した両者の激突が注目される。今回、同理論の提唱者でスポーツ整体師の広戸聡一氏(60)が2人の共通点を分析。「柔軟性」「瞬発力」「体の軸」に注目し、さらに佐藤輝は高いレベルで良い状態を維持し続けると予測した。【取材・構成=中野椋】

佐藤輝と佐々木朗。令和を代表する投打のスターには通ずるものがあった。13年からロッテとコンディショニングなどのアドバイザリー契約を結ぶ広戸氏は、佐々木朗の「4スタンス」タイプを分析したこともある。佐藤輝を指導する藤井康コーチとは約15年来の仲。「4スタンス理論」に基づく指導においては、師弟関係だ。実際に見て聞いて分かった両選手の共通点には、真っ先に圧倒的な出力の高さを挙げた。

広戸氏 柔軟性と瞬発力がある。胸郭に柔らかさがあって、2人とも体幹から一瞬でパワーを解き放てる。手足の力はそんなに使っていない。

「4スタンス理論」の分類でいえば、佐藤輝が「B1」で佐々木朗が「B2」。タイプは違っても、プレー前の準備を大切にする姿勢は同じと見る。キーワードは「軸」だ。

広戸氏 佐藤選手は今季、構えの時点でリズムを取るように小刻みに動いていますよね。体の軸をしっかり感じることができているんでしょう。佐々木投手にも投球前の体の軸について話をしたことがあります。軸を感じることができるポジションというのは、胸郭が緩んで呼吸が気持ち良くできる位置。2人とも、動く前のところでベストポジションを作り出せている。「この形なら絶対うまくいくよね」って状態を作り出せている。

決して「4スタンス理論」を取り入れたから、すぐさま結果が出るわけではない。提唱者ではあるが、縛られる必要はないと説く。

広戸氏 ポイントを抑えたら、あとは自由でいい。「君は4スタンスでこのタイプだから、こうやって打って…」っていう考えは面白くない。やっちゃいけないことだけ見る。「それはさすがにやめておこうよ」「君にとっては動きにくいよ」って。そこを藤井さんが見てくれている。

昨季はスランプに苦しんだ佐藤輝も、「チェックする人」が身近にいることで安定飛行が続く可能性が高まる。

広戸氏 疲れてきたら本来の動きから変わってくる。そこで小手先の改善点を言われちゃう。やたらめったら形を変えてしまうと、もともと持っていたものがおかしくなっちゃうでしょ? 1試合で打った、打たない、じゃない。いい投手と当たった時に崩されないとか、そっちの方が大事。常にグラウンドレベルで指導できる藤井さんがいるのは貴重ですよ。

何より願うのは、球界の発展。数々のアスリートを見てきた広戸氏も、2人のビッグプレーヤーに夢を見ている。

広戸氏 大谷翔平選手が開けた道を佐藤選手、佐々木投手が通っていく。はるかに野球はベースボールを超えたんだよって。ぐうの音も出ないような、これが俺たちの野球だぞって見せつけてほしい。その象徴が、この2人。そんな未来が見たいよね。

◆4スタンス理論 人間のスタンス(立ち方)はその身体的構造から重心が異なり、爪先側(A)とかかと側(B)、内側(1)と外側(2)でA1~B2の4タイプに分類され、それぞれに合う体の動かし方で最大限の力が出せるという考え方。ゴルフスイングの分析に用いられて話題になった。近年では20年ロッテの新人合同自主トレで、提唱者の広戸聡一氏の講義を受けた佐々木朗がエンゼルス大谷らと同じ「B2」に分類された。

◆広戸聡一(ひろと・そういち)1961年(昭36)6月13日、東京都生まれ。整体専門学校を卒業後、整体施療家として治療を行い、89年にスポーツ整体「広戸道場」開業。05年ごろから人の身体特性を4種類に分類する「4スタンス理論」を提唱。現在は一般社団法人「レッシュ・プロジェクト」代表理事を務め、スポーツ選手だけでなく、文化・芸能人らも指導。4スタンスタイプはB2。