ソフトバンクのドラフト4位野村勇内野手(25)が2発を含む3安打3打点の大活躍で日本ハムに3連勝だ。“恐怖の2番”は1点リードの3回に9号2ランを放つと、8回にはダメ押しの10号ソロ。1リーグ時代の1939年(昭14)に鶴岡一人が10本塁打して以来、83年ぶりに球団新人最多記録に並んだ。チームは首位西武を0・5差でピタリ追走。コロナ禍で厳しい戦いが続くが、ヤングパワーで8月戦線を乗り切る。

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チームで最も大きな背番号「99」を背負っている野村勇が、大きな1発を左中間テラス席に運び去った。3点リードの8回1死。日本ハムの2番手、井口の131キロのスライダーを狙いすまして振り抜いた。

「最後に打てないと意味がない。絶対に打とうと思った」。カウント2-1からの4球目。苦手としていた右腕からのダメ押し10号ソロでチームを3連勝に導いた。公称175センチと大柄ではないが、パンチ力はチーム屈指。3試合ぶりのスタメンで“恐怖の2番”が強烈な存在感を発揮した。

初対決だった先発左腕の加藤もいきなり攻略した。初回の第1打席。初球のカーブを強振。左翼ポール際に大ファウルを放つと、2球目のスライダーを左翼線二塁打した。1点リードの3回1死一塁では、初球を右翼テラス席へ9号2ラン。「とにかく自分らしい思い切ったスイングをしようと打席に入りました。正直、打った球はわかりません。無我夢中でスイングをした結果がホームランになりました」。中押し、ダメ押しの2発で10号に到達。ホークス新人の2桁弾は、1リーグ時代の39年鶴岡一人以来83年ぶりの球団タイ記録。野村克也や門田博光らの歴代主砲も成し得ていない快挙だ。

南海時代の名監督で、ホークスのレジェンドでもある「鶴岡親分」と肩を並べてもピンとこないところが25歳の若武者らしい。「(鶴岡さんは)知らないです。でも僕なんかが光栄です。あと1本打って(球団記録を)超せるなら、頑張って抜きたい」と笑った。

チームはコロナ禍で主力の離脱が続出し、8月戦線は厳しい戦いを強いられている。そんな中で野村勇ら「代役」の活躍で日本ハムに3連勝。上昇モードに戻し、首位西武を0・5差でピタリ追走だ。藤本監督の声のトーンも上がった。「野村勇さまさまですね。まだまだ試合残っているのでしっかり戦いたい。元気出して明るくやっていきましょう」。大激戦の混パ制覇へ、新人のバットが勢いを運んできた。【佐竹英治】

◆野村勇(のむら・いさみ)1996年(平8)12月1日生まれ、兵庫県出身。藤井学園寒川(香川)から拓大を経てNTT西日本に入社。21年ドラフト4位でソフトバンク入団。趣味はゴルフ、釣りなど。実家では「ちゅんちゅん」と名付けた文鳥を飼っている。1年目の今季は73試合に出場し、132打数31安打、10本塁打、21打点、打率2割3分5厘。175センチ、80キロ。右投げ右打ち。

◆鶴岡一人(つるおか・かずと)1916年(大5)7月27日生まれ、広島県出身。46~58年の登録名は山本一人。広島商では31年春の甲子園で優勝。法大を経て39年南海入団。同年10本塁打でタイトル獲得。応召後の46年に選手兼任監督で復帰し、52年に現役引退。内野手で活躍し、実働8年、754試合、790安打、61本塁打、467打点、143盗塁、打率2割9分5厘。現役時代は173センチ、68キロ。右投げ右打ち。65年に野球殿堂入り。1球団で23年連続監督は最長で、監督通算1773勝も最多。00年3月7日、心不全のため83歳で死去。

▼ルーキー野村勇が自身2度目の1試合2本塁打で、今季10号。新人のシーズン2桁本塁打は昨季の佐藤輝(阪神=24本)と牧(DeNA=22本)以来だが、ソフトバンクでは南海時代の39年に10本の鶴岡以来83年ぶりで、球団の新人最多記録に並んだ。また、マルチ本塁打を2度記録した新人も昨季の佐藤輝以来だが、球団では初めて。

▼野村勇は132打数の10本塁打で、本塁打率(打数÷本塁打)は13・20。10本塁打以上の中では山川(西武)の9・80に次ぐパ・リーグ2位の本塁打率だ。セ・リーグを見ても、野村勇より上は村上(ヤクルト=8・55)とサンタナ(ヤクルト=9・83)だけ。

▽ソフトバンク嘉弥真(6回2死一、二塁で宇佐見を空振り三振)「自分の役割を果たしたまでです。チームの勝ちにつながる投球ができてよかったです」

▽ソフトバンク松本(7回の1イニングを3者連続三振)「1球1球、丁寧に投げることを心掛けました。自分の役割を果たすことができたと思います」

○…3番柳田が貴重な追加点となる16号ソロを放った。2点リードの6回。左腕加藤のスライダーを右翼にはじき返した。「タイミングは合いませんでしたが、ポイントでヘッドをコツンと合わせることができました」とにっこりだ。前日は母校広島商の野球部員を招待してタイムリー。コロナ禍のチームを救う4試合連続打点で奮闘している。

○…1試合4本塁打の1発目はデスパイネだ。0-0の2回先頭。先発左腕加藤のフォークをとらえて左翼に運んだ。「先制点を、という気持ちで打席に入ったよ。ホームランという最高の結果となってよかったです」。先制の7号ソロが決勝点。4番がしっかりと仕事を果たした。

○…新型コロナウイルス陽性判定を受けて離脱していた千賀が、ウエスタン・リーグのオリックス(タマスタ筑後)で復帰登板した。先発で4回40球を投げ、1安打無失点。最速158キロをマークするなど順調な回復ぶりを見せた。登板内容を聞いた藤本監督は「じゃあ、もう大丈夫。次に期待しましょう」と話し、次回は60球をメドに1軍で登板させる考えだ。

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